欧州委員会は1月26日、ドイツやフランスなどEU12カ国が電気自動車(EV)向け電池などのバッテリー開発プロジェクトに最大29億ユーロ(約3,600億円)の補助金を交付する計画を承認したと発表した。公的支援を通じてプロジェクトを推進することで、90億ユーロの民間投資を呼び込むことができ、2025年までにEV向け電池の調達で中国などアジア勢に依存する現状からの脱却が可能との見方を示している。
「欧州バッテリー・イノベーション」と名づけられた今回のプロジェクトは、原材料の抽出から電池セルやパックの開発・製造、リサイクル、廃棄に至るバリューチェーン全般で、内外の42社が実施する計46件の研究・開発プログラムに対し、独仏のほかイタリア、スペイン、ベルギー、スウェーデン、ポーランドなど12カ国が28年にかけて補助金を拠出するという内容。
支援の対象には独BMWや伊フィアットを傘下に置くフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)、FCAと仏グループPSAの統合で誕生したステランティスなど欧州の大手メーカーに加え、ドイツに工場を持つ米テスラなど、域外に本社を置く企業も含まれている。日本勢ではフランスに拠点を置く東海カーボンが対象となる。このほかリチウムイオン電池のノースボルト(スウェーデン)やボルトラボア(オーストリア)、特殊化学メーカーの仏アルケマなどがリストに名を連ねている。
EUは公正な競争を阻害する恐れのある国家補助を原則として禁止しているが、14年の「欧州の共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」に関する政策文書に基づき、複数の加盟国がイノベーションの必要な重点分野に共同で資金支援を行うことを認めている。バッテリー関連では19年に独仏伊など7カ国による総額32億ユーロの国家補助が承認されており、今回は同分野で第2弾となる。
EUは17年に「欧州バッテリー連合(EBA)」を立ち上げ、域内におけるバッテリー産業の育成を推進してきた。同連合には域内に拠点を置く400以上の企業や研究機関などが参加しており、欧州企業によるEV用電池の大規模生産に向けた準備が進められている。
欧州委のシェフチョビッチ副委員長は「一連の施策を通じて欧州はバッテリー投資の世界的なホットスポットとしての地域を確立した。新たな汎欧州プロジェクトを通じて25年までに少なくとも年間600万台の電気自動車にバッテリーを供給できる体制を整える」と述べ、国家補助をテコにEBAの取り組みを加速させたい考えを示した。