スイスがEUとの制度的枠組み条約交渉打ち切り、社会保障給付などで合意できず

スイス政府は26日、EUとの「制度的枠組み条約(Institutional Framework Agreement)」の締結交渉を打ち切ると発表した。EUとスイスの関係は120を超える個別の協定で成り立っており、両者はそれらに代わる包括的な条約の締結を目指して2014年から協議を続けていた。欧州委員会はスイスの決定に対して遺憾の意を表明し、新条約がなければ「両者の関係を近代化することはできない」と警告している。

制度的枠組み条約は、EUの法改正や規制の変更が自動的にスイスとの協定に反映されるようにするための制度の見直しや、両者間の紛争処理手続きなどを定めるもので、スイスにとっては既存の協定が期限を迎えて失効した場合でも、EU単一市場へのアクセスを保障する土台と位置づけられていた。しかし、スイス国内では多くの国民がEUとの緊密な関係の維持を望む一方、主権侵害を懸念する声も根強く、政治対立の火種になっていた。

スイス政府によると、現行の賃金水準を維持するための法的保障の確保、補助金に関するルール、スイスで働くEU市民への社会保障給付の3点で協議は平行線が続き、最終的に枠組み協定に署名しないことを決定した。カシス外相は特に対立が深まっていた社会保障給付の問題に触れ、スイスで働くEUの労働者にスイス国民と同等の権利を与えるべきだとのEUの要求は、スイスの移民政策に「不要なパラダイムシフトをもたらすもので受け入れられない」と語った。

欧州委は声明で「スイス政府の決定を残念に思う。新条約はEUとスイスの関係を将来に向けて強化・発展させるための基盤となることを目指していた。締結交渉の打ち切りにより、両者の関係は既存の協定に依存したままとなり、近代化することはできない」と指摘。交渉が頓挫した影響を注意深く分析する方針を示している。

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