EU「復興基金」の起債開始、200億ユーロを調達

欧州委員会は15日、新型コロナウイルス感染拡大で大きな打撃を受けたEU経済の再生に向けた「復興基金」の資金を確保するための最初の起債を実施し、200億ユーロを調達したと発表した。EUの高い信用力を背景に、応募が発行枠の約7倍の1,420億ユーロに達し、予定額を順調に調達できた。

EU加盟国が12月に合意し、創設が決まった復興基金は、欧州委が市場で調達した資金をEUの中期予算に組み込み、新型コロナによる経済の打撃が大きい国に補助金と融資の形で配分するというものだ。

イタリアなど支援対象国は財政が不健全で、独自の国債発行による資金調達が難しいことから、欧州委がEUの高い信用力を生かして債券を発行する。基金は7,500億ユーロ規模。補助金が3,900億ユーロ、返済不要の融資が3,600億ユーロとなる。調達した資金は2058年まで30年間をかけて返済する。

欧州委は物価の変動を考慮し、基金の規模を上回る8,000億ユーロを26年末までに調達する計画。償還期間3~30年のEU債が中心となる。年内に800億ユーロを調達する方針で、第1弾となる今回の起債では10年債を発行した。欧州委のヨハンネス・ハーン委員(予算担当)によると、域内外の中央銀行を含む機関投資家が中心となって引き受けた。EU機関による1回の起債での調達としては過去最大規模という。

起債は入札、シンジケート団方式を組み合わせて実施されることになっている。今回はシンジケート方式。過去にEU競争法に違反した野村ホールディングス、JPモルガン、シティグループ、バンク・オブ・アメリカ、バークレイズなど10社は参加できなかった。野村は5月、欧州の国債取引をめぐる7社のカルテルに加わったとして、欧州委から約1億3,000万ユーロの制裁金支払いを命じられていた。

ただ、欧州委は18日、これら10社のうち8社は次回の起債から参加できるようにすると発表した。8社の具体名は明らかにしていないが、ロイター通信などが伝えた消息筋の情報によると野村が入っている。

加盟国に配分される資金は、各国の復興計画に基づき、脱炭素化、デジタル化などの関連プロジェクトに投入される。加盟国は復興計画を策定して欧州委の審査を受ける必要がある。16日に第1弾としてスペイン、ポルトガルの計画が承認された。欧州委は近く全加盟国の計画を承認する見込みで、7月に資金提供が開始される予定だ。

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