欧州委がデジタル課税導入計画を保留、国際課税ルール成立を優先

欧州委員会は12日、EU独自のデジタル課税の導入計画を保留する方針を明らかにした。先に20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が国際的な法人課税ルールの大枠で承認したことを受け、最終的な合意形成を優先させる。巨大IT企業を抱える米国は一部の国が独自に導入したデジタルサービス税の撤廃を求めて圧力を強めており、EUの決定を歓迎している。

EUでは2018年からデジタル税の導入が検討されている。現行の課税制度では、国内にオフィスや工場など物理的な拠点を持たない企業に対し、原則として法人税を課せない仕組みとなっているため、EU内で国によって異なる課税ルールを利用したネット企業などによる課税逃れを防ぐのが狙い。しかし、税制改革には全ての加盟国による全会一致の承認が必要で、低税率を武器にIT企業を誘致してきたアイルランドやルクセンブルクなどの反対で調整が難航。このためフランスやイタリアなどはEUに先行する形で、ネット広告の収入に課税する独自ルールを導入している。

EUはその後、新型コロナウイルスで打撃を受けた経済復興のための新たな財源として、国境炭素税などと合わせてデジタル課税について検討を進め、欧州委は7月20日に課税案を公表する予定だった。しかし、経済協力開発機構(OECD)が今月1日、法人税の最低税率を「少なくとも15%」に設定することや、売上高200億ユーロ超、利益率10%超の企業を対象としたデジタル課税の導入を柱とする国際課税ルールの大枠で合意。G20 が10日にこれを承認したことで、米国はEUに対して独自ルールの導入を見送るよう迫っていた。

欧州委のフェリー報道官は12日の記者会見で、「デジタル課税の導入に向けた作業を保留することを決めた」と表明。G20は10月に開かれる次回会合で国際課税ルールの最終合意を目指していることから、EUとして今秋に改めて課税計画を評価する意向を示した。

イエレン米財務長官は13日、ロイター通信の取材に応じ、EUが独自のデジタル課税の導入を先送りしたことについて、法人税を巡る国際的な合意形成につながると評価。10月の最終決着に向け、課税対象となる企業への課税権配分などについて国際ルールの整備を急ぐべきだと指摘した。

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