英政府は14日、冬に向けた新型コロナウイルス対策を発表し、50歳以上の人などを対象に3回目のワクチン接種(ブースター接種)を実施する計画を明らかにした。ワクチン接種の対象年齢を広げ、12~15歳にも1回接種する。冬場の感染拡大で医療提供体制がひっ迫するのを防ぎ、ロックダウン(都市封鎖)などの規制を回避する狙いがある。
ブースター接種は50歳以上と医療従事者、16歳以上で基礎疾患がある人などが対象。2回目の接種から6カ月経過した人から順次進める。
英国ではこれまでに16歳以上の8割強が2回の接種を完了している。ブースター接種については専門家の間でも意見が分かれていたが、冬場は感染が広がりやすいうえ、インフルエンザなど他の感染症の流行と重なる恐れもあるため、中高年層などへの追加接種が必要と判断した。
12~15歳へは米ファイザー製のワクチンを1回接種する。2回目の接種が必要かどうかは今後判断する。英政府の諮問機関であるワクチン・予防接種合同委員会(JCVI)は今月初め、若年層を中心にまれな副反応として心筋炎の発症が報告されていることから、12~15歳のグループではワクチン接種のリスクがメリットと上回るとして推奨しない方針を示した。しかし、欧米やイスラエルなどで12歳以上へのワクチン接種が進む中、政府の首席医務官らは学校での感染拡大を防止する観点から接種が必要と判断した。
政府は冬にかけて重症者が増加し、医療体制がひっ迫した場合の対応として、人口の約8割が集中するイングランドで在宅勤務の推奨や、店舗などでのマスク着用の義務化などを再導入する方針を示した。イングランドで計画されていたワクチンパスポート(接種証明書)に関しては、ワクチン接種率が高いことなどを理由に現時点では導入が見送られたが、医療体制がひっ迫した場合は大規模イベントなどでの提示義務化を検討する。
英国では7月に新型コロナ対策の規制を全面的に解除し、コロナと共生しながら社会・経済活動を正常化する道を進んでいる。ジョンソン首相は記者会見で「ワクチンで高い免疫の壁を築くことで、ロックダウンのような厳しい規制を避けることができる」と強調した。