欧州で新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるための規制を緩和する動きが広がっている。多くの国で伝播性の高い変異ウイルス「オミクロン」による感染拡大が続いているが、デルタなどと比べて重症化しにくいことや、ワクチンの追加接種が進んだことなどから、規制緩和に踏み切る国が相次いでいる。
オーストリア政府は29日、2月から新型コロナ関連の規制を大幅に緩和すると発表した。感染者数は引き続き高い水準で推移しているものの、入院患者は増えていないため、ワクチン未接種者に対する移動制限の解除に踏み切る。
ネハンメル首相は記者会見で「感染は収まっていないが、幸い入院者数は低い水準にあり、集中治療が必要な症例も極めて少ない」と説明。2月5日から店舗の営業時間を午前0時まで延長するとともに、イベントの人数制限も緩和し、12日からはワクチン未接種やコロナ既往歴のない人に対する外出制限を解除する方針を打ち出した。医療のひっ迫を防ぐため、同国では昨年11月から未接種者らに対し、食料品の買い出しや通院などを除く不要不急の外出を禁止していた。
一方、デンマーク政府は26日、2月1日からコロナ関連の規制を撤廃すると発表した。マスクの着用やワクチン接種証明の提示義務などが廃止されるほか、映画館やナイトクラブなどの営業が再開され、レストランでは夜10時以降もアルコールを提供できるようになる。
フレデリクセン首相は記者会見で、感染者数は高い水準で推移しているものの、入院患者は増えておらず、デルタの流行期などと比べて医療機関の負担が減ったと説明。「規制を撤廃してコロナ前の生活に戻ることが可能と判断した」と述べた。
また、オランダでは26日、昨年12月半ばから閉鎖されていたバーやレストラン、映画館や博物館などの営業が再開された。飲食店や劇場などは午後10時までの営業が認められるが、人数制限や社会的距離の規則は維持される。
ルッテ首相は25日の記者会見で、人と人との接触機会が増えれば再び感染が急拡大する可能性があるとしたうえで、「日常生活を厳しく制限する措置が長引けば、国民の生活や社会全体に悪影響が及ぶ。政府には状況に応じて大胆な措置を取る責任がある」と強調した。
こうしたなか、ドイツやポーランド、ハンガリー、チェコ、ブルガリア、ルーマニアでは25日、1日の新規感染者数が過去最多を記録した。これを受けてポーランド政府は同日、26日から高学年の生徒を対象に遠隔授業に切り替えると発表。スウェーデン政府は現行のコロナ規制の実施期間を2週間延長する方針を打ち出した。また、ドイツでは連邦議会(下院)で新型コロナワクチンの接種義務化をめぐる議論が本格化する見通しとなっている。