暗号資産の利用制限を検討、対ロ制裁「抜け道」阻止へ

EUは2日、オンライン形式で財務相会合を開き、ロシアに対する経済・金融制裁の抜け道として暗号資産(仮想通貨)が使われないよう、対策を検討することで合意した。西側諸国はロシアの大手銀行を国際的な資金決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除するほか、中央銀行の資産を事実上凍結するなどの制裁を決定したが、暗号資産が資金決済の代替手段となり、制裁の効果が損なわれる恐れがあるためだ。

EU議長国フランスのルメール財務相は会合後の記者会見で、ウクライナ侵攻を受けた対ロ制裁は極めて効果的で、ロシアの金融システムに混乱をもたらし、中銀の為替介入を困難にしていると指摘。そのうえで「EUが決定した金融制裁を回避する手段として暗号資産が使われることがないよう、対策を講じる」と述べた。今後、欧州委員会が具体策を検討することになる。

ロシアによるウクライナ侵攻以降、暗号資産の取引が活発化している。株式などから仮想通貨に資金を移す動きが世界的に広がっているほか、金融制裁で外貨との交換が困難になったルーブル建ての取引が急増。ビットコインの価格は2日時点で約4万4,000ドルと、EUと米英など6カ国がロシアの一部銀行をSWIFTから排除することで合意した2月26日と比べて13%上昇している。

ウクライナ政府は主要な暗号資産取引所にロシア系ユーザーとの取引停止を要請しているが、大半は一律の規制に否定的。ロシア政府高官など制裁対象者の口座凍結には協力するが、一般のロシア国民を閉め出すことは暗号資産の自由至上主義的イデオロギーに反するといった意見が支配的だ。ケイマン諸島に拠点を置くバイナンスのチャンポン・ジャオ最高経営責任者(CEO)は英BBCとのインタビューで「制裁を回避しようと思えば方法はいろいろある。現金やダイヤモンド、金を使うことも可能で、暗号資産が特別なものではない」と述べた。

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