ドイツ連邦経済・気候省は3月30日、天然ガスの国内供給が不足する可能性が出てきたとして、「早期警戒」を発令した。ロシアが自国産天然ガスの支払いをルーブルで行うよう「非友好国」の顧客に要求し、拒否した場合は供給停止も辞さない構えを見せていることを受けた措置。事態の悪化に備えて対策本部を設立した。ハーベック経済・気候相は、現時点で国内供給に支障は出ていないものの、ロシアが状況をエスカレートさせた場合に備えなければならないと述べた。企業や消費者にはガス消費を可能な限り抑制するよう要請している。
早期警戒は3段階からなる天然ガス供給の警戒システムの第1段階に当たるもの。同警戒システムは欧州連合(EU)の「天然ガスの安定供給確保に関する規則」に基づくもので、政府はすでに早期警戒を発令したことを欧州委員会に伝達した。
ガス販売・輸送事業者は市場で適切な措置を取るとともに、市場の情報を政府に定期的に伝えることを義務付けられる。これらの措置にもかかわらず供給状況が悪化した場合は第2段階の「警戒」、第3段階の「緊急」へと警戒レベルが引き上げられていく。緊急段階では国家が市場に介入。供給は一般消費者や病院向けが優先され、製造業などは後回しにされることから、天然ガスを利用するメーカーは早急に対策を立てる必要がある。それ以外の企業もサプライチェーンのさらなるひっ迫への対策が必要だ。
ロシアのプーチン大統領は23日、同国に制裁を課した米国、EU、日本などの「非友好国」の企業に天然ガスのルーブル決済を義務付ける意向を表明した。主要7カ国(G7)は28日、これを契約違反として受け入れ拒否の立場を表明したものの、ロシアは姿勢を改めていない。
ロシアのペスコフ大統領報道官はこれに関して30日、ルーブル支払い義務の導入は段階的に進めると述べ、当面は他の通貨での支払いを認める意向を示した。ただ同時に、同義務を石油など他の資源や製品に拡大する考えも示唆した。西側諸国を揺さぶって結束に亀裂を入れる考えとみられる。