エストニアが地熱エネルギーの開発に関するパイロット事業を進めている。昨年開始された同事業は、同国での地熱エネルギーの可能性を明らかにし、経済性を評価することを目的としたもので、今後実証施設を設置して地熱プラントの導入につなげる予定だ。同国は地熱エネルギーの利用が既に行われている隣国フィンランドの協力を得て同事業を進めていく方針で、フィンランドの関係機関の参加が検討されている。
パイロット事業では2つの地熱発電所の建設が計画されている。欧州連合(EU)は地熱を再生可能エネルギーの1つとして認めており、エストニア政府も開発を後押ししていく方針だ。予算総額は380万ユーロで、温暖化ガスの排出権取引で得られた資金の助成を受ける。実施期間は2024年末までの予定。
同事業を推進するのはエストニア地質研究所で、同国での地熱エネルギーや鉱山及び海中で発生する熱水をエネルギーとして利用する可能性に関する調査を進めている。同研究所によると、地熱エネルギーは低温のものであれば地下1メートルから地熱ポンプを使い取り出すことができる。同国で地下500メートル以上の地中から中高温の地熱エネルギーが得られるかどうかはまだ明らかになっていないが、フィンランドでは大規模に利用されている。フィンランドのユヴァスキュラやエスポー近郊の地下1.4キロメートルの地熱貯留層には年間1.5ギガワット時の発電が可能な熱資源が眠っているとされているほか、同国のタンペレでは深さ3キロメートルの地中でのボーリング調査が実施されている。
同事業を率いるアウバールト氏によると、テスト施設で効率の高さが実証できれば、国内の建設会社や不動産会社による地熱エネルギーの利用が促進される見通しだ。建築物のエネルギー効率の向上はEUのエネルギー転換政策で最も重要なテーマとされている。EUのエネルギー消費量の約40%が建築物で消費されており、エネルギー効率の高い建物の数を増やすため助成措置を導入することが必要とされる。
地熱エネルギーは地上にそそぐ太陽エネルギーの蓄積や地核で生まれた熱の循環から発生する。地熱は効率性が高く、従来の大気を利用した熱ポンプよりも効率性が2倍優れている。地熱による熱ポンプでは10度から15度の熱を高温化や冷却の両方に利用することができる。加熱では30%から60%、冷却では20%から50%のコストを節約することが可能だ。