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2013/10/23

コーヒーブレイク

ワイナリーがジュースメーカーに~トルコ

この記事の要約

親イスラム派のエルドアン政権が推進する飲酒抑制政策で、最初の犠牲者が出た。同国西部のテキルダー近郊で営業するワイン醸造組合「ムサリ」がワイン生産を中止すると発表したのだ。今後はぶどうジュースのみを作るという。\ 組合長の […]

親イスラム派のエルドアン政権が推進する飲酒抑制政策で、最初の犠牲者が出た。同国西部のテキルダー近郊で営業するワイン醸造組合「ムサリ」がワイン生産を中止すると発表したのだ。今後はぶどうジュースのみを作るという。

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組合長のバルカンさんによると、アルコール飲料の夜間販売や広告、公の場での飲酒などが禁止されたり、税金が高くなったりで採算が取れなくなった。昨年は40万リットルのワインを出荷したが、今年は収穫したブドウ400トンをジュースに加工する。今年の販売量は3,000リットル、来年は15万リットルを見込む。

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皮肉なのは、この醸造組合が2007年にエルドアン政権の支援で結成された事実だ。4年前には政府の融資助成で大量生産に移行したばかり。果たしてジュースで生き残れるのか、不安が残る。

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父とともに10年かけてワイナリーを立ち上げてきた27歳の女性醸造家オズカンさんも、潜在顧客を掘り起こせないと頭を抱える。一般の広告はもちろん、店のウィンドウを飾ることも禁止、試飲も禁止となると、味で個性をアピールする小規模ワイナリーには出す手がない。

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オズカンさんは母国で農業技術を学んだあと、米サンフランシスコでワイン学の修士号を取得した。「イスラム教国でワイン?」と尋ねる学友にトルコのリベラルさを誇ったが、いまや「以前のようにトルコの味方ができない」とぼやく。

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国内市場で販売攻勢がかけられない以上、輸出に活路を見出すしかない。トルコ産ワインは過去2年に外国で500回以上、賞を獲得している。オズカンさんは国外に目を向け始めている。

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一方、エルドアン政権の施策にもかかわらず、トルコでのアルコール飲料市場は拡大を続けている。2004年から12年までに全体で25%強増加、ワインに限るとほぼ2倍に伸びている。

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エルドアン首相は、トルコの国民的飲料は蒸留酒「ラク」ではなくヨーグルト飲料「アイラン」だと宣言したが、実現の道は厳しい。

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