中・東欧、CIS諸国、ロシアに特化した情報誌

2010/7/28

ロシア

ロシア大統領、IT産業育成に注力

この記事の要約

ロシアのメドベージェフ大統領が、新たな産業部門として情報技術(IT)を有望視している。資源に大きく依存する同国経済のあり方を変えていくため、革新技術の推進を補助していく姿勢だ。先月の訪米時にカリフォルニア州シリコンバレー […]

ロシアのメドベージェフ大統領が、新たな産業部門として情報技術(IT)を有望視している。資源に大きく依存する同国経済のあり方を変えていくため、革新技術の推進を補助していく姿勢だ。先月の訪米時にカリフォルニア州シリコンバレーを視察し、その活気に触れたことがきっかけになったとみられる。

\

ロシアは旧ソ連時代から物理、数学、プログラミングなどで非常に優秀な人材を輩出しており、頭脳のレベルではIT産業を支える地盤がある。実際、ウイルス対策ソフトのカスペルスキー、光学文字認識(OCR)ソフトのアビーなど、世界を相手に事業を展開する企業も存在する。

\

ただ、ロシアのIT産業はまだ端緒についたばかり。国内に数千社あるといわれるIT企業のうち、国際的に名が知られるのはほんの一握りに過ぎない。

\

その背景には、国内需要が大きく、企業にとっては外国に進出する必要性が低いという事情がある。ロシアは、取引先との文書のやり取りにメールを使っていない企業があるなど、ITの本格普及はこれから、という段階なのだ。

\

企業経営者も、金融危機をきっかけに業務プロセスの効率化に注目し始めている。コスト管理が不十分で、赤字が急激に増えたためだ。現地のIT業界専門家は、「どの企業も、ほぼゼロからのスタートと言ってよく、ITサービスはIT業界の中でも、これから最も伸びるだろう」と話す。

\

業務の自動化に関連するプロジェクトでは現在、政府機関や国営企業など、政府が最大の発注者だ。政府入札では、国内企業が落札するケースが多い。このため、ロシア市場では外国とは異なるソフトウエアの「国内標準」も成立しつつある。企業ソフトではSAPではなく、モスクワに本拠を置く1C Companyが最大シェアを握っているのがその一例だ。

\

業界関係者は、ロシア企業も中期的には国外進出に乗り出すとみる。進出の障害となっている経営ノウハウと外国語知識の不足を、3~4年以内に克服できるとの見方だ。

\

市場調査会社のIDCによると、ロシアのIT市場規模は今年170億米ドルと、前年比で10%近く拡大する見通しだ。2014年までに330億ドルに成長すると予測されている。

\