オーストリアの大手銀行エルステがこのほど発表した2010年上半期連結決算は、純利益が4億7,190万ユーロとなり前年同期から4.1%後退した。純金利収入は7.2%増の26億8,480万ユーロ、手数料収入は8.6%増の9億6,500万ユーロにそれぞれ拡大した。一方で、貸し倒れ引当金が21.5%増の10億8,420万ユーロに膨らみ、利益を圧迫した。金融収支が30%減の2億4,000万ユーロに激減したことも響いた。
\主力の中東欧事業の純利益は前年同期比9%減の3億2,250万ユーロに落ち込んだ。純金利収入、手数料収入ともに伸びたが、貸倒引当金が6億7,900万ユーロと39%も増加して足を引っ張った。ただ、ハンガリーを除くと引当金繰入額の増加ペースは減速している。
\同行の中東欧主要市場であるチェコは、純利益が3%増の1億8,490万ユーロ、スロバキアは3倍近い5,340万ユーロを確保した。一方、ハンガリーでは貸倒引当金が前年同期を76%も上回り、70%の減益(1,260万ユーロ)となった。同国の不良債権比率は9.78%で、ウクライナ29%、ルーマニア15%、セルビア12%に比べると低いが、前年同期より3ポイント以上、08年第4四半期より6ポイント以上も上昇した。銀行税が新たに導入されることも収益改善を図るうえで重荷になりそうだ。
\預貸利ザヤはウクライナ、セルビア、ルーマニアの6~8%に対し、チェコ、スロバキア、クロアチア、ハンガリーは3~4.5%と低かった。ウクライナとハンガリーでは利ザヤが拡大してきたが、チェコとルーマニアでは狭まる傾向にある。
\エルステの観測ではチェコ、スロバキア、ハンガリーでは輸出主導で景気が緩やかに回復するが、ルーマニアでは年内の好転は難しそうだ。中東欧全体の貸付規模は今年後半も低水準のままとみている。
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