温暖化による氷の消失で、北極における膨大な天然資源の開発や、欧州とアジアを結ぶ最短航路である北極海航路の利用拡大が可能になるとみられている。ロシアのメドベージェフ大統領が昨年承認した北極に関する長期政策指針には 2020年までに北極を「主要な戦略的資源基地」とするとともに、北極海航路を国家戦略ルートとして開発することなどが盛り込まれている。
\ロシアは先月28日、北極圏の大陸棚の外縁などを調べるため調査船「アカデミック・フョードロフ」を送った。北極海ではロシアのほか米国、カナダ、ノルウェー、デンマークが自国の沿岸から200カイリを排他的経済水域(EEZ)として天然資源の開発権を持っている。国連海洋法条約によると、EEZ域外でも海底が大陸棚の自然の延長だと科学的に証明できれば、地下資源の開発権が容認されるため、ロシアはシベリア沖から北極海を横切るロモノソフ海嶺を自国の大陸棚の延長として領有権を主張。01年に世界で初めて国連大陸棚限界委員会(CLCS)に大陸棚の拡張を申請したものの、データ不足を理由に却下された。今回の調査は、この主張を裏付ける更なるデータ集めが目的だ。「アカデミック・フョードロフ」の出航に立ち会ったプーチン首相は、14年までにCLCSに2度目の大陸棚延長の申請を行う方針を示した。
\北極海の利権に対するロシアの野心に沿岸国は警戒を強めている。米国とカナダは2日、調査船「ヒーリー」「ルイ・S.サンローラン」を送り大陸棚の共同調査に乗り出したほか、ロモノソフ海嶺がグリーンランドの大陸棚の延長だと主張するデンマークも独自に調査を進めており、北極を巡る周辺国の綱引きは今後、より熱を帯びそうだ。
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