中・東欧、CIS諸国、ロシアに特化した情報誌

2011/3/30

ロシア

ガスプロムに追い風、政情不安や原発事故で

この記事の要約

中東・北アフリカの政情不安や福島第一原子力発電所の事故で、天然ガスの世界最大手であるガスプロムの商機が拡大している。第一の理由は、新たな調達先として注目を集めていた北アフリカ諸国の治安が悪化し、ロシアが「より確実な供給源 […]

中東・北アフリカの政情不安や福島第一原子力発電所の事故で、天然ガスの世界最大手であるガスプロムの商機が拡大している。第一の理由は、新たな調達先として注目を集めていた北アフリカ諸国の治安が悪化し、ロシアが「より確実な供給源」として見直されていることにある。第二の理由は、原発の稼働停止で日本への追加輸出が見込まれるためだ。ただ、欧州委員会はロシアへのエネルギー依存を弱める方針を堅持する立場を明らかにしており、今回の供給増加が長期的な取引拡大につながるかは不透明となっている。

\

ガスプロムは、対リビア経済制裁により同国からの輸入を中止した欧州に向けて、ガスを追加供給することを決めた。地震で合計出力12ギガワットの原発が稼働を停止した日本に対しては、発電用燃料として液化天然ガス(LNG)の輸出を増やす。

\

アナリストらは、福島での事故をきっかけとして欧州などで原子力エネルギーの利用を見直す動きが広まっており、ロシアなど化石燃料の産出国が販売を増やすと見込んでいる。投資銀行のVTBキャピタルによれば、日本と欧州に向けたガスプロムの出荷量は今年、予定の3,000億立方メートルを3~5%上回る見通しだ。3月は前年同月比10%増の165億立方メートルが見込まれている。

\

日本はロシアが有力な取引先として狙いを定めていた市場で、ガスプロムとしては今回の輸出増加を機に地盤を固めたいところだ。ロシアが日本のLNG輸入に占める割合は2009年度に6.5%だった。

\

欧州はロシアの最重要市場だが、ロシアへのエネルギー依存から脱却するためにナブッコ・パイプライン建設やLNGによる輸入拡大を計画している。ロシアはこれに対抗して欧州の囲い込みを狙っており、ナブッコ・パイプラインと競合するサウス・ストリーム計画を推進するほか、直近では伊エニと提携してリビア油田事業を立ち上げる計画だった。

\

しかし、中東や北アフリカからの供給源を差し引いても欧州のガス市場は供給が過剰気味で、ガスプロムがシェアを拡大するのは容易ではなさそうだ。ドイツ経済研究所(DIW、ベルリン)は、「競争に勝つには値引きに応じる必要がある」と指摘している。

\
COMPANY |
CATEGORY |
KEYWORDS |