2011/11/23

総合・マクロ

中東欧で貸し倒れ懸念、外貨建てローンが不良債権化か

この記事の要約

金融市場の混乱が銀行へ与える影響が強まっている。欧州債務危機に続いて、中東欧市場での貸し倒れ懸念が浮上してきた。スイスフランなどの外貨建て住宅ローンの返済が、自国通貨安で難しくなってきているためだ。すでにハンガリーでは問 […]

金融市場の混乱が銀行へ与える影響が強まっている。欧州債務危機に続いて、中東欧市場での貸し倒れ懸念が浮上してきた。スイスフランなどの外貨建て住宅ローンの返済が、自国通貨安で難しくなってきているためだ。すでにハンガリーでは問題が顕在化したが、米格付け大手のムーディーズはポーランドについてもリスクが大きいと判断している。

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中東欧では2008年の金融危機前に、低金利が魅力の外貨建て融資契約が多く結ばれた。しかし、スイスフラン高で返済の負担が債務者の肩に重くのしかかっている。ハンガリーでは債務不能寸前の人が80万人と推定され、国内景気は底ばい状態だ。

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ムーディーズは同じ問題がポーランドにも生じつつあると警鐘を鳴らす。今年8月現在、同国の不動産ローンの20%強が外貨建て。引き続きズロチ安が進行すれば、債務の焦げ付きが大きく増加するとみて、ポーランド金融機関の信用格付けの見通しを「ネガティブ」に引き下げた。

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HSBCトリンクハウスのアナリスト、エッサー氏によると、ルーマニアやセルビアでも外貨建てで多額の融資が行われており、貸し倒れリスクが潜在する。

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ハンガリーでは外貨建て債務者の救済措置が9月に立法化され、金融業界は最悪の場合、総額25億ユーロの負担を強いられる見通しだ。ハンガリー金融監督庁(PSZAF)によると、これまでに3万人が同法の適用を申請。金融機関の損失は440億フォリント(1億4,000万ユーロ)に達する計算だ。

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金融機関はスイスフラン建てで25%、ユーロ建てで15%の債務免除を意味する同措置に強く抵抗している。主要行は救済法が欧州法に抵触するとして、欧州連合(EU)のバルニエ域内市場担当委員に対し、連名で欧州委の介入を要請。これらの銀行には、ハンガリー事業に力を入れてきたドイツのバイエルン州立銀行、イタリアのウニクレディト、オーストリア大手銀行らが含まれる。

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オーストリアのエルステ銀行は救済法の成立を受けて、第3四半期に4億5,000万ユーロの引当金を計上し、大幅な赤字決算となった。ライフアイゼンバンク・インターナショナルも1億2,000万ユーロの損失を見込んでいる。バイエルン州立銀は16日、ハンガリー事業の1億800万ユーロの引当金計上で、通期連結決算が赤字となる見通しを示した。

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欧州復興開発銀行(EBRD)など欧州金融機関は、2008年の金融危機に際して欧州大手銀行が中東欧子会社への資金供給の継続で合意した「ウィーンイニシアチブ」の復活に向けて尽力しているもようだ。

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