ルーマニアのボック内閣が6日総辞職した。2009年以来進めてきた財政緊縮策に対して国民の抗議が強まり、与党内でも首相の支持が低下していたことが理由だ。バセスク大統領は次期首相として、元外務大臣で無所属のウングリャーヌ対外諜報庁長官(43)を指名した。ウングリャーヌ氏は財政緊縮策を継続する方針を明確にした。ルーマニアに財政支援を行っている国際通貨基金(IMF)も内閣交代による政策への影響はないとみている。次期内閣が議会によって正式承認されるまで、プレデョウ外相が暫定首相を務める。
\ルーマニアは金融危機の影響で深刻な財務危機に陥り、IMFと欧州連合(EU)から200億ユーロの融資を受けた。その条件として政府支出の大幅な削減や増税を求められた。すでに◇公務員の賃金25%カット◇公共部門の人員削減◇付加価値税率を19%から24%へ引き上げ◇年金支給額の凍結――などを実行に移している。
\しかし、生活が困窮する一方で汚職対策が進まないなど、国民の不満は増大。先月には公的医療制度改革案を機に各地で抗議行動が開催され、政府は同案を取り下げざるを得なくなった。それ以降も反首相・反大統領デモが続いている。
\このような事態を反映して、ボック首相が所属する民主党(PDL)の支持率は先週の時点で15.8%まで急落した。11月の議会選挙を控えて党内でも危機感が高まり、週末のIMF代表団との交渉完了後にボック首相が辞任するとの公算が強まっていた。
\野党の社会自由連合(社会民主党と国民自由党で作る選挙連合)は前倒し選挙を求めているが、連立与党が多数を占めるため、ウングリャーヌ氏の首相選出は確実視されている。
\ルーマニアはIMFの条件通り、昨年の対国内総生産比の財政赤字を4.35%に抑えることに成功した。今年はさらに1.9%まで縮小することが求められている。IMFでは今年の同国の経済成長を2%と予測している。(東欧経済ニュース1月25日号「ルーマニアで大規模な反大統領デモ、医療制度改革案を機に」を参照)
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