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2012/3/14

ロシア

配当政策に変化の兆し・株主還元重視へ

この記事の要約

ロシア企業は伝統的に株主に対する利益還元に積極的でなく、過去5年間の平均配当利回りは1.8%と、新興国市場全体の平均を約25%下回っている。しかし、こうした傾向に変化が起きている。米金融大手モルガン・スタンレーによると、 […]

ロシア企業は伝統的に株主に対する利益還元に積極的でなく、過去5年間の平均配当利回りは1.8%と、新興国市場全体の平均を約25%下回っている。しかし、こうした傾向に変化が起きている。米金融大手モルガン・スタンレーによると、2012年のロシア企業の平均配当利回りは3.3%と新興国平均を初めて上回る見通しだ。

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天然ガス独占企業ガスプロムは昨年12月、2011年の期末配当を前年の倍の水準に引き上げると発表。配当利回りは5%超と、エクソンモービルやBP、シェブロンといった欧米の大手エネルギー会社を上回る。アナリストは、ロシアを代表する企業であるガスプロムが株主への利益還元に積極的な姿勢に転じたことは、ロシア企業の対外的なイメージを向上させて投資を呼び込み、国際競争力を高めようとする政府の思惑が背景にあると指摘する。英大手銀行HSBCのベック・ソレンセン新興国市場担当ディレクターは、「ガスプロムがきっかけとなり、他の企業も(配当引き上げに)追随するだろう」と期待を寄せる。

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配当利回りの低さや貧弱なコーポレート・ガバナンスに加えて政治的なリスクは、ロシア企業のバリュエーションを低下させてきた。英資産運用会社ベアリング・アセット・マネジメントのシラー氏は、「配当政策の転換は企業価値評価に多大なインパクトを与える」と述べ、今後はロシアと他の新興国市場とのバリュエーションギャップが縮小に向かうとの見方を示している。

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