中・東欧、CIS諸国、ロシアに特化した情報誌

2012/3/21

総合・マクロ

中東欧の経済成長が鈍化、今年は1.5%に=WIIW春季予測

この記事の要約

ウィーン国際経済比較研究所(WIIW)が15日発表した最新の景気予測によると、中東欧の欧州連合(EU)加盟10カ国の国内総生産(GDP)は今年、1.5%の拡大にとどまる見通しだ。これは昨年の半分以下の水準。世界経済の減速 […]

ウィーン国際経済比較研究所(WIIW)が15日発表した最新の景気予測によると、中東欧の欧州連合(EU)加盟10カ国の国内総生産(GDP)は今年、1.5%の拡大にとどまる見通しだ。これは昨年の半分以下の水準。世界経済の減速、特に輸出市場として重要なユーロ圏諸国の不振が足を引っ張る。一方で、中東欧諸国の経済回復の速度は一様でなく、EU内の収入格差が縮まるスピードも鈍化するとみられる。

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中東欧10カ国の成長率はユーロ圏に比べると高くなるが、2008年の金融危機前のペースを下回る。来年と再来年はやや回復して3%を超える見通しだ。トルコ、ロシア、ウクライナ、カザフスタンは今年3~6%の予測。

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ポーランド、チェコ、スロバキア、バルト諸国で今年3%の成長が見込まれるのに対し、ハンガリー、スロベニア、クロアチアでは縮小が予想される。WIIWによると、過去10年間に民間債務が急増して経常赤字を生んだ国々が苦戦している。

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金融危機前は低金利融資による資金調達を基盤に経済が成長してきたが、今後は調達条件が厳しくなる。また、体制変換後に縮小した工業生産がほぼ1989年の水準に回復し、成長のエンジンであった外需も大きな増加が見込めない。さらに、多くの国で政府支出が縮小傾向にある。このため、今後の経済成長は民間消費の拡大が担うことになるが、そのスピードは緩やかなものとなりそうだ。

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GDPのEU平均との差は、スロベニアとチェコが20%以内で最も小さい。一方でハンガリーやウクライナなどでは今後数年にわたって差が縮まらない見通しだ。経済的に貧しい国ほど早く成長して欧州内の経済格差が縮まるという従来の予測は外れ、逆に差が広がる恐れも出ている。

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