投資銀行大手のバークレイズ・キャピタルはこのほど、ロシア証券市場の本格的な回復には経済構造の改革が不可欠との見方を明らかにした。プーチン大統領就任で政治的な不確定要素が弱まったことや内需の成長など、プラス材料があり、短期的には上向く可能性がある。しかし、汚職、官僚主義、産業分野の偏りといった根本的な問題は解決の見通しが立っておらず、企業配当も少ないことから、投資家を積極的なロシア投資に動かす理由が欠けていると説明する。
\バークレイズのアナリストは、短期的な回復につながる材料として、いくつかの経済指標を挙げる。
\まず、ロシアは昨年、国内総生産(GDP)が4.3%拡大した。成長の重点が輸出から内需に移ってきており、小売売上高は8.3%の成長を遂げた。賃金成長率は9%で実質賃金も伸びている。
\また、原油増産と価格高騰で貿易収支は黒字。ロシア産原油価格の目安となるウラル原油価格は今年115米ドル、来年は125ドルに上昇する見通しだ。
\資本流出は選挙が終わったことで減少している。国内の金融システムは着実に成長してきた。金融危機で下落した通貨ルーブルは今年に入って対ドル為替相場が9%上昇した。
\しかし、中期的な見通しは明るくない。
\まず、昨年の資本流出額が840億ドルにも上った背景には、政治的緊張と、根本的改革の不在があると指摘する。金融危機後のロシア経済の回復は予想されたペースを下回っているが、これは経済拡大につながる改革が実施されていないことを示す。
\経済の担い手は依然としてエネルギーと金融業界で、上場企業の増益・増配に新興企業は貢献していない。ロシア企業の増益率は経済成長率の半分と他国に比べても低く、さらに利益の株主還元率も低い。企業が利益の多くを社内留保しているのに、なぜ事業が成長しないのか、不透明な部分が多い。
\政府が提唱する構造改革は、◇汚職対策◇官僚主義是正◇所有権の保護◇産業の多様化◇国外直接投資(FDI)拡大◇競争力の強化――といった肝要な部分には触れられていない。根本的改革を求める政治家が解任されていることも見通しを暗くしている。
\ロシア中央銀行でさえ、今後10年間のGDP成長率を平均3~3.5%と見積もっている。これは、プーチン大統領の予測値の半分だ。
\バークレイズによれば、現在の株価は大幅な増配や高い経済成長率を見込んだもので、適正価格を約25%上回っている。期待が外れれば株価の下落がさけられない。
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