2012/5/23

総合・マクロ

セルビア大統領選、右派ニコリッチ氏が当選

この記事の要約

セルビアで20日実施された大統領選の決選投票は事前の予想をくつがえし、右派のトミスラフ・ニコリッチ候補(60)が現職のボリス・タディッチ候補(54)を破って当選した。コソボ問題など政治的な立場が問われた以前の選挙と異なり […]

セルビアで20日実施された大統領選の決選投票は事前の予想をくつがえし、右派のトミスラフ・ニコリッチ候補(60)が現職のボリス・タディッチ候補(54)を破って当選した。コソボ問題など政治的な立場が問われた以前の選挙と異なり、失業率24%に象徴される経済の停滞が争点となったこと、また、タディッチ氏支持層で棄権が多くなったことがニコリッチ氏に有利に働いたようだ。セルビアは今年3月に欧州連合(EU)の加盟候補国として正式に承認されたばかり。親欧米派でEU早期加盟を目指すタディッチ氏から、コソボ独立を断固拒否する「大セルビア主義」を夢見るニコリッチ氏に交代することで、EU加盟が遅れる可能性が浮上している。

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選挙監視機関の自由選挙・民主主義センター(CeSID)が21日発表した推算によると、ニコリッチ氏の得票率は49.8%、タディッチ氏は47%だった。投票率は46.3%と2004年以降に行われた選挙で最低に落ち込んだ。無効票の比率は通常の2.5%を上回る3.2%に上った。

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両氏は2004年、08年にも決選投票で対決したが、いずれもタディッチ氏が当選した。ニコリッチ氏は今回、従来の欧州連合(EU)加盟拒否の姿勢を修正して選挙に挑んだが、「コソボ独立の承認が条件であればEUに加盟しない」と発言するなど、慎重な立場だ。

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進歩党は今月3日の議会選で25%を得票して第一党に躍進した。タディッチ氏が率いる民主党(DS)とダチッチ内相の社会党(SPS)は、タディッチ氏の大統領再選を視野に連立継続で合意していた。ただ、社会党は政治的には民主党よりも進歩党に近く、ニコリッチ氏当選で進歩・社会両党が連立に動くのではという憶測も浮上している。

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現行の議席配分では進歩党と民主党の大連合を除くと2党で安定多数を確保できない。民主党は進歩党との連立を拒否しており、どの党がどの党と組むことになっても組閣作業は難しくなりそうだ。

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ニコリッチ氏は、経済停滞による生活の悪化、法制改革の遅延、汚職、組織犯罪などの責任が民主党にあるとして選挙戦を展開した。これが不満票を集めたのに加え、従来タディッチ氏を支持してきた有権者が政治への期待を失い、投票所に足を向けなかったことが今回の結果につながったとみられている。

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タディッチ氏は20日晩の記者会見で敗北を認め、ニコリッチ氏を祝福した。また、21日から民主党と社会党の連立協議が始まることに触れた上で、首相に就任する意思のないことを明らかにした。(東欧経済ニュース5月3日号「セルビアでダブル選挙、与野党が拮抗」を参考)

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