2014/1/22

コーヒーブレイク

お金は手段~ロシア

この記事の要約

ロシアで最も裕福な女性とされるエレナ・バツリナ氏(50)。ルシコフ前モスクワ市長(77)の夫人と言ったほうが、わかりやすいだろう。モスクワの不動産業界で財を成した彼女だが、2010年のルシコフ氏失脚以降は外国を主な生活・ […]

ロシアで最も裕福な女性とされるエレナ・バツリナ氏(50)。ルシコフ前モスクワ市長(77)の夫人と言ったほうが、わかりやすいだろう。モスクワの不動産業界で財を成した彼女だが、2010年のルシコフ氏失脚以降は外国を主な生活・事業の拠点としている。

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金融危機で財産が目減りしたとはいえ、億万長者には変わりない。「ロシア成金」のイメージ通り、一般消費者の目に「無駄」と映るような生活を送っているかというと、案外堅実なようだ。

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もちろん、モスクワ、ロンドンをはじめ各地に「お屋敷」があり、オフィスも一等地に構える。しかし、バツリナ氏は「お金が目的ではない。稼いだお金で目的を実現するのが大事」と話す。

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体制転換後に現れたロシア成金第一世代については厳しい言葉も飛び出す。トリックを使ってお金が手に入ったのはいいけれど、「その次に何をしていいかわからないから、買うヨットはどんどん大きくなり、愛人はどんどん若くなる」というのだ。「本当の目的がないから、目的を達成した満足感がなくて、いつも心が満たされていない」と斬る。

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ルシコフ氏の失脚についても、「市長になったときから、いつか辞めるのはわかっていたこと」と冷静で、家族や友人を大切にしていたから、ルシコフ氏と自分の評判がガタ落ちしてもそれほどこたえなかったという。

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事業面では引き続きホテル部門への投資を続けているが、バツリナ氏の活動範囲はこれに限られない。2年前には、明日の世界に役立つものを創造する財団「ビー・オープン」を立ち上げた。デザイナーから建築家、アーティスト、作家、実業家、哲学者、社会学者、オピニオンリーダーなど、さまざまな分野の人材を集め、テーマを特定してシンポジウムや展覧会などのイベントを開催している。大きな目的は優秀な若い人材の育成で、コンテストの入賞者には奨学金を支給している。

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バツリナ氏は自分が「満たされた人間だと思う」という。まだ動き出したばかりだが、「ビー・オープン」が生み出す結果を思い浮かべることができるからだ。将来、人々が「自分の出発点が『ビー・オープン』にあった」と言ってくれるなら、本当に幸せだという彼女に「成金」の印象はない。

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