2014/9/3

コーヒーブレイク

ドイツ人残留孤児と難民の子どもたち

この記事の要約

第二次世界大戦の末期、旧ドイツ帝国に属していた東プロイセン、ポマーン地方から多くの難民が西へと避難した。凍てつく寒さと食糧不足、迫り来るソ連軍の攻撃――その道は険しく、多大な犠牲を強いた。 当時のエピソードの一つが「ヴォ […]

第二次世界大戦の末期、旧ドイツ帝国に属していた東プロイセン、ポマーン地方から多くの難民が西へと避難した。凍てつく寒さと食糧不足、迫り来るソ連軍の攻撃――その道は険しく、多大な犠牲を強いた。

当時のエピソードの一つが「ヴォルフスキンダー(オオカミの子どもたち)」と呼ばれる戦争孤児の苦難だ。ソ連占領下の旧ドイツ領からリトアニアやベラルーシに逃げ、森に隠れて飢えと戦った。その数は2万5,000人に上り、そのうち数千人が亡くなったというが、詳しい数は分からない。

ナチス・ドイツ軍によるポーランド侵攻から75周年を迎えた今年、これら孤児の物語を綴った映画「ヴォルフスキンダー」が劇場公開された。本作品が初の長編映画となるリック・オースターマン監督は製作に先立ち、「ヴォルフスキンダー」本人やその家族の多くに会い、聞き書きして話を作り上げた。

映画の舞台は終戦から1年が経った1946年の夏。14歳のハンスと9歳のフリッツの兄弟が、病死した母の言葉に従い、知り合いが住むというリトアニアを目指す。二人ははぐれてしまい、ハンスは同じ境遇の他の子どもたちと共に西に向かう。

森の果実や川のカエルで飢えをいやし、ソ連兵に見つからないかと怯えながら歩む子どもたち。厳しい状況にさらされた彼らは、否が応でも成長しなければならなかった。

映画では、歴史的背景や事実の描写は意図的に抑え、あくまで「子どもの目で見た」当時の体験をなぞっている。奇しくもシリア、ウクライナ、イランなどでの戦火が、再び多くの難民を生んでいる現在、ハンスやフリッツの体験は、時間と空間を超えた子どもたちの運命を映し出している。