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2014/11/5

コーヒーブレイク

ユダヤ人の「生」を展示~ポーランド

この記事の要約

ワルシャワで先月25日開館したユダヤ歴史博物館が注目を集めている。ナチスドイツによる虐殺(ホロコースト)の印象にさえぎられて、なかなか知られてこなかったユダヤ人の生き様を伝えることが展示の目的の一つとなっているためだ。 […]

ワルシャワで先月25日開館したユダヤ歴史博物館が注目を集めている。ナチスドイツによる虐殺(ホロコースト)の印象にさえぎられて、なかなか知られてこなかったユダヤ人の生き様を伝えることが展示の目的の一つとなっているためだ。

第2次世界大戦以前のポーランドは350万人ものユダヤ人が暮らす欧州最大のユダヤ人コミュニティを擁していた。ユダヤ人に対する差別が比較的小さかったことで10世紀以来、他の地域から多くの人が移り住んできたためだ。

ポーランドに住むよう神の啓示があったという伝説の詩に始まり、時間とテーマに分けて8つの展示室が設けられた。このうち1つがホロコーストに関するもので、ほかはユダヤ人の「生」を映している。ただ、ナチスによる破壊で現物はほぼ消滅しており、現ウクライナ領リヴフの近くで1650年に建てられたシナゴーグの内装を初め、展示物のほとんどが復元となっている。

かつてユダヤ人が多く住み、ナチスがワルシャワ・ゲットーを設置したムラヌフ地区の中心に位置するこの博物館。10人家族のうちただ1人ワルシャワ・ゲットーを生き延び、戦後もワルシャワに暮らし続けるユダヤ人のクリスティナ・ブドニツカさん(82)は、「私たちがよそ者ではなく、数百年にわたってここで生き、働き、生み出してきたことがわかる展示」と話す。

ポーランドでは根強い反ユダヤ主義を反映し、戦後もポーランド人が加担した虐殺事件や排斥運動が起こった。このため、長い間、ユダヤ人の歴史に真正面に取り組むことが避けられてきた。新しい博物館では、これら痛みの伴う史実も他の出来事と同じように扱われ、ポーランドがこの点でも大切な一歩を踏み出したことがうかがわれる。