ロシア経済省は2日、同国の2015年の国内総生産(GDP)が0.8%減に落ち込むとの見通しを示した。実現すれば、2009年以来初めてのマイナス成長となる。従来は1.2%増を見込んでいた。
ウクライナ情勢をめぐる欧米の対ロ制裁に加え、原油価格の下落、通貨ルーブル安が景気の足を引っ張っている。ヴェヴェフ副経済相によると、来年度予算の下敷きとなる原油価格(バレル当たり)を従来の100ドルから80ドルに、ルーブルの対ドル為替相場を1ドル当たり37.7ルーブルから49ルーブルに引き下げた。来年の財政赤字は900億ドルを見込む。インフレ率についても従来の5~6%から7.5%に上方修正した。
3月のクリミア半島併合で加速した資本流出も勢いが衰えず、今年は通年で1,250億ドルに達するとみる。従来は1,000億ドルと見込んでいた。来年についても、500億ドルから900億ドルへ見通しを引き上げた。
欧米諸国の制裁によるロシア経済の損害額は今年400億ドル前後に上る。従来は来年半ばまでの制裁解除を予測していたが、今回、来年末まで継続すると判断した。これも経済の見通しを暗くしている。
7月の制裁強化では基幹産業である石油業界に加え、大手銀行も対象となり、国内大手企業の外貨調達が難しくなった。しかし、過去の債務の償還には外貨が必要で、ルーブルへの圧力が余計に高まっている。その結果、対ドル相場は年初からこれまでに6割近くも下がった。
ロシアの外貨準備高は今年に入って約1,000億ドル減ったが、現在でも4,200億ドルにのぼる。ただ、そのうち1,720億ドルは2つの基金が管理しており、中央銀行の裁量では使うことができない。クリミア半島編入に伴う支出もかさむため、必ずしも資金が十分とは言えない状況だ。
原油価格は年初に比べて約3割安くなった。ロシアは輸出の3分の2、歳入の半分を資源産業に頼っており、原油価格が市場の評価を左右する。石油輸出国機構(OPEC)が先月27日に生産量維持を決めたことで、ルーブル売りの圧力が高まったのもその証だ。週明け1日のルーブル相場は対米ドル、対ユーロともに6%下落し、1日の下げ幅としては1998年の通貨危機以来、最大を記録した。(1RUB=2.25JPY)