中・東欧、CIS諸国、ロシアに特化した情報誌

2015/1/7

総合・マクロ

オーストリアに大きな利益、EU東方拡大で

この記事の要約

欧州連合(EU)に中東欧諸国が加盟した「EU東方拡大」でオーストリアが大きな利益を受けている。オーストリア企業が東欧市場に進出するだけでなく、最近は東欧から同国に投資するケースも増え、相互的な経済関係が育ちつつあるようだ […]

欧州連合(EU)に中東欧諸国が加盟した「EU東方拡大」でオーストリアが大きな利益を受けている。オーストリア企業が東欧市場に進出するだけでなく、最近は東欧から同国に投資するケースも増え、相互的な経済関係が育ちつつあるようだ。

オーストリアの輸出高に占める中欧・南東欧の比率は拡大前の10%から20%以上に拡大し、国外直接投資先の3分の1が南東欧諸国となっている。特に金融機関の活躍が顕著で、西欧諸国の対南東欧融資に占めるオーストリア金融機関の比率は20%にも上る。旧ソ連諸国でもオーストリア企業の活動が盛んだ。

最近では、これらの国々からオーストリアに流入する資金も大きく増加している。経済の悪化やウクライナ紛争でその傾向は強くなり、ロシア資産家がオーストリア企業に投資する例などがみられる。

国外企業の誘致を促進する国営機関・オーストリア経済振興会社(ABA)によると、市場の安定性などに加えて地理的な近さと交通の便のよさが魅力となっている。独フランクフルト空港を除けばウィーン国際空港のように東欧の都市へ直行便が飛んでいる空港はない。一方でドイツに比べるとオーストリア市場は規模が小さく、参入への敷居が低い。

オーストリアの金融機関が積極的に東欧に進出していることや、外国資本による企業設立に詳しい税理士、弁護士、物流業者などがいることも利点だ。さらに、クロアチア、スロベニア系のオーストリア人がいるほか、隣国からの移民も多く、外国語の話者が豊富なのもプラスとなっている。

なお、ロシア人が資産運用や事業の多様化を進める上でオーストリアを好むのは、「欧州市場の長所がそろっていることに加え、北大西洋条約機構(NATO)に加盟していない中立国であること、冷戦時代に由来する親オーストリア感情があるため」(ABA)という。昨年はロシア資本系の企業数が377社に増加し、オーストリアの外資系企業数でドイツやイタリアに次ぐ5番目に位置している。