2015/2/11

コーヒーブレイク

「彼女」は誰だ~ロシア

この記事の要約

それはロシア経済紙『RBCデイリー』の1月28日付報道から始まった。モスクワ版シリコンバレーを作ろうという14億ユーロ相当の巨大開発計画のコンセプト策定を、無名の28歳の女性が率いる非政府団体が担当するという。この28歳 […]

それはロシア経済紙『RBCデイリー』の1月28日付報道から始まった。モスクワ版シリコンバレーを作ろうという14億ユーロ相当の巨大開発計画のコンセプト策定を、無名の28歳の女性が率いる非政府団体が担当するという。この28歳、学術界での経歴はなく、主だった学会にも顔を出したことはない。しかし、開発計画の舞台となるモスクワ大学の学術評議会の一員だ。また、先ごろの世界経済フォーラム年次総会には、石油化学最大手シブールのキリル・シャマロフ副社長を従えて出席した――という内容だった。

この報道に関連して、スイスに亡命中のジャーナリスト、オレグ・カシンさんが翌29日にブログで、謎の28歳が「プーチン大統領の次女」である可能性が高いと書いたことで欧米メディアが騒ぎ出した。ロイター通信は29日中に、モスクワ大学関係者から「娘だ」との証言を得た。

女性の名はカテリーナ・チホノヴァさん。ダンス競技選手でもあり、世界ロックンロール連盟(WRRC)の副会長も務める。名前の「カテリーナ」はプーチン大統領の次女と同じ、大会参加登録に記された誕生日も一致する。次女の名づけについてプーチン大統領は、母方の祖母の名をもらったと話していたが、祖母の2番目の名は「チホノヴナ」で、「チホノヴァ」と酷似している。

この件についてプーチン大統領の報道官は「その女性が誰だか知らない。これまでにも大統領の娘だとされた人は何人もいた」とコメント。娘である事実を「否定」はしなかった。

いろいろな傍証が出ているものの、何よりも説得力のあるのは「プーチン大統領が、これだけの巨大プロジェクトを何の関係もない人間に任せるはずがない」という意見だ。私生活について沈黙を守り続けていた大統領が昨年11月、2人の娘に言及したことから、そろそろ公の場に出てくるのではとの憶測も出ていた。

コネつながりで築いたプーチン大統領の「新封建社会」に、「実の娘」以上のコネはない。しかし、娘を表舞台に出すのは「禁じ手」という批判が早くも出ている。