欧州連合(EU)の中東欧加盟国の意見が珍しく一致した。地中海で密航船の転覆が相次ぎ、大量の難民が死亡している事実を受け、欧州委員会は13日、加盟国ごとに受け容れ枠を設定することを提案したが、この案に足並み揃えて反対しているのだ。
ハンガリーはEUの端に位置することから難民の数が急増している。昨年の難民申請数は4万3,000件と前年の2.3倍に増加した。この問題を「軽減」するため、当局の難民登録手続きはおざなりで、難民の移動も監視していない。EU内の国境検査がないため、難民はオーストリアやドイツなど、さらに西へと移動していき、ハンガリーの管轄から離れていくからだ。
オルバン首相は今年初め、はっきりと「移民お断り」の談話を発表した。経済難民は断固として拒否し、EUへの入国を犯罪化すべきとの立場だ。また、戦争難民を受け入れると、テロの危険が増すというイメージ作りに努力し、国民が難民受け入れに反対するよう仕向けている。
チェコ政府はイラク、ヨルダン、レバノンなどにある難民キャンプに(わずかな)資金を提供することで、難民の受け入れを逃れたい考えだ。
ゼマン大統領はたびたび「イスラム教徒は歓迎しない」と公言してきた。「穏健なイスラム教徒がいないのは、穏健なナチスがいないのと同じ(=イスラム教徒は皆過激)」と言ったことさえあり、中東地域からの難民を拒否する姿勢が政治に根付いてしまった。昨年の難民申請数は1,100件と人口の0.01%に過ぎないが、そんなことは関係ないらしい。ホヴァネツ内相は受け入れ枠問題について国民投票を実施する可能性もちらつかせている。
ポーランドやスロバキア、バルト三国も従来の規定に沿った「自由意志による受け入れ」を提唱する。
中東欧からは冷戦時代に多くの人が「政治的難民」として逃れてきた。当時、西欧をはじめとする「域外」の国々がこれらの人々を受け入れた事実は、体制転換から25年が過ぎて忘れ去られてしまったのだろうか。