2015/10/21

コーヒーブレイク

綿花大国の収穫事情~ウズベキスタン

この記事の要約

中央アジアの国、ウズベキスタンで結婚式などの祝い事が時限的に禁止された。その理由は「綿摘み」だ。世界有数の木綿輸出国である同国だが、綿花の収穫は手作業に頼っている。9月中旬から11月中旬に、政府が国民を強制的に綿摘みに動 […]

中央アジアの国、ウズベキスタンで結婚式などの祝い事が時限的に禁止された。その理由は「綿摘み」だ。世界有数の木綿輸出国である同国だが、綿花の収穫は手作業に頼っている。9月中旬から11月中旬に、政府が国民を強制的に綿摘みに動員して収穫量を確保しているという。

英国の人権団体アンチ・スレーバリー・インターナショナルによると、昨年の動員数は100万人を超えた。他の団体はその2倍以上と推定している。

政府は今年、レストランなどに収穫が完了するまで結婚式などの祝い事を催さないよう指示した。すでに招待状を出した人は、延期するか自宅で祝うしかない。政府側は「収穫が速く終わればそれだけ早くパーティーも解禁」とし、国民の「やる気」を高める措置と悪びれない。

実はウズベキスタンの綿花収穫では最近まで、児童労働が批判の的となっていた。これが国際人権団体の圧力でなくなり、大人が代わりに畑に出なければならなくなったのだ。

狩り出される人は農民だけでなく、医師から学生、教師、商店主、失業者、年金労働者と職種に関係ない。誰か代わりに行ってくれる人がいるか、そういう人を雇うかができなければ有無を言わさず連れて行かれてしまう。当局が手配したバスに乗せられて遠い畑に運ばれ、自宅には帰れない。1日10時間働き、衛生設備も整っていない小屋で雑魚寝する生活で、健康を害する人も多い。ウズベキスタン木綿産業における強制労働の廃止を目指す団体「コットン・キャンペーン」によると、昨年は17人が死亡したという。

年齢などによって1日に摘まねばならない綿の量は異なるが、学生の場合、60キロだそうだ。「報酬」は1キロ当たり4ユーロセント相当だが、昼食代1ユーロ(=25キロ分)は自腹と徹底した搾取ぶりだ。

ウズベキスタンは世界第6位の綿花生産国(2013年)で、年80万トンの木綿を輸出する。主な仕向け先はロシア、中国、バングラデシュ、韓国だ。輸出収入は10億米ドルに上るが、政府高官の管理する「農業基金」に流れ、国民はその恩恵にあずかれない。

このため、国外で活動するウズベキスタンの人権団体は、(1)木綿の原産地表示の義務化など、消費者が労働条件の透明化を要求していく(2)世界銀行は強制労働がある限り、ウズベキスタン農業分野への支援を中止する――などを求めている。(2)については、世界銀行が5億ドルを融資している事実を指摘している。