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2015/12/16

コーヒーブレイク

ゴラムは悪役か~トルコ

この記事の要約

エルドアン大統領を侮辱した疑いで、今度はお医者さんが訴えられた。ツイッターで、「大統領が『ロード・オブ・ザ・リング』の登場人物ゴラムに似ている」と写真付きでつぶやいたのが原因だ。有罪となれば2年の懲役刑を受けることになる […]

エルドアン大統領を侮辱した疑いで、今度はお医者さんが訴えられた。ツイッターで、「大統領が『ロード・オブ・ザ・リング』の登場人物ゴラムに似ている」と写真付きでつぶやいたのが原因だ。有罪となれば2年の懲役刑を受けることになる。

しかし、これが侮辱かどうかを判断するのは難しい。『ロード・オブ・ザ・リング』の作者であるトルーキンが描いた人物(キャラクター)は、良いのか悪いのか、白黒つけられない奥行きがあるからだ。

侮辱罪が成立するにはゴラムが「悪役」でなければならないため、困った裁判所は「専門家チーム」に判断をゆだねたという。

もともとゴラムは悪役ではなかったが、自己愛と欲によって堕落してしまった。というと、「それこそ大統領とそっくり!」という声が聞こえてきそうだが、「大統領侮辱罪容疑」ではここ数カ月で数百人が起訴されているから注意されたい。

ドイツの歴史家、ルートヴィッヒ・クヴィデは19世紀末の段階で、ローマ皇帝が「カエサル病(=権力妄想狂)」にかかっていたと分析した。「一見すると際限がなく思われる権力」を持ったことで「浪費癖、軍事的成功への執着、自らの神聖化、被害妄想」が増幅。ティベリウス帝が皇帝侮辱罪に死刑を導入したのが良い例だ。

さて、ゴラムはエルドアン大統領と比較されてどう思っているのだろう。大統領は少なくとも2004年に死刑を廃止し(今は再導入したがっているが)、娘たちを米国に留学させ(アメリカ大陸はもちろん、1178年にイスラム教徒に発見された)、トルコ民族の輝きと誇りを映す大統領官邸を建てた(住人は大統領一人)。

残念ながら、ゴラムは指輪をフロドから奪ったときに火山の火口に落ちて死んでしまった。この問いには答えは出ないままである。(東欧経済ニュース14年11月26日号「アメリカ大陸はイスラム教徒が発見」を参照)

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