ポーランド議会は先ごろ、下院の財政委員会に大手商業銀行8行の頭取を召致し、手数料引き上げに対する参考人質疑を行った。今月初めに導入した銀行資産税の負担を顧客に転嫁するための値上げだった疑いが浮上しているためで、政府は「納得のいく説明がなされなければ」手数料引き下げを強行する構えを見せている。
昨年10月の選挙で過半数議席を獲得して政権に就いた右派「法と正義(PiS)」は、社会福祉財源の拡大を目的に、金融や小売りなど外資系企業の強い業界に対する課税強化を進めている。このうち金融業界については銀行資産の0.44%を徴収する新税を導入。年間の徴税額は推定44億ズロチ(10億ユーロ)と、業界利益の実に3分の1を超える。
このため、国が筆頭株主のPKOバンク・ポルスキ(PKO BP)をはじめ、ライファイゼンバンク・インターナショナル(RBI)、独コメルツ銀子会社のMバンクなど大手銀行の多くが手数料引き上げを予告・実行したところ、「納税負担の軽減が目的」との疑惑が浮上した。
委員会にはPKO、ドイツ銀行、RBIなど8銀行の頭取が参考人として出席した。値上げは毎年恒例の手数料見直しの結果とし、新税とは無関係と説明。利ざやの縮小や、特定サービスの利用減少を誘導することによるマージン確保などを理由に挙げた。
しかし、アンジェイ・ヤヴォルスキ財政委員長は会合後の会見で、「銀行は関係ないというだけで、値上げの具体的な理由を説明できなかった」と指摘。また、ヴィエスワフ・ヤンチク副委員長は関連法で新税導入を理由とする値上げが禁じられていることに触れ、「議会は銀行の手数料引き下げを強行できる」との見方を示した。
なお、新税関連ではコンラート・ラツコフスキ副財務相が、外資系銀行による資産の国外移管増加が課税回避策に当たる可能性を指摘。これまでの調査を詳細に分析すると予告した。
ポーランド金融業界は約6割を外資系が握る。PiSは、銀行が「過去10年の間、経済成長の果実を一般のポーランド人と分け合わなかった過ち」を正す措置として、外貨建て住宅ローンの国内通貨ズロチへの強制転換策も予告している。強制転換による銀行の負担総額は300億~600億ズロチとみられており、銀行の経営環境は一段と厳しくなりそうだ。
このため、すでに米ゼネラルエレクトリック(BPH)とRBIはポーランド事業の売却先を探し始めている。