新興諸国市場の景気減速が懸念されるなか、中東欧諸国が健闘している。中東欧の欧州連合(EU)加盟国は昨年、成長率でEU平均を大きく上回った。今年は昨年並みか、それ以下になる見通しだ。
オーストリアの経済紙『ヴィルトシャフツブラット』の分析によると、中東欧EU加盟国の国内総生産(GDP)は昨年、実質ベースで平均3.5%拡大した。また、第4四半期のブルガリア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキア及びチェコの成長率は平均3.9%に達した。いずれも金融危機以降で最高の水準だ。
中東欧の好調について独コメルツ銀行は、エネルギー価格の低下、低金利、自動車産業における投資が好材料になったと分析。また、前EU中期予算(2007~13年)における助成金支給打ち切りを年末に控え、各国が計画実施を急いだことが投資を押し上げたという。
ユーロ圏で政府の純投資額が平均でマイナスとなっているのに対し、中東欧諸国はプラス圏にある。GDPに対する純投資額の比率は過去3年で平均0.6ポイント上昇した。国別ではスロバキアが2.4ポイント、ブルガリアとハンガリーが2.2ポイントの伸びをみせている。
今年は中期予算末の駆け込み需要後となるため、投資は減少する見通しだ。欧州委員会では中東欧の対GDP純投資比率が昨年の2%から1.4%へ低下すると見込んでいる。
一方、民間による固定資本形成(住宅及び企業設備への投資)は伸びる見通しだ。GDPに対する比率は昨年の4.2%から今年は4.7%、来年は金融危機以来最高の5%へ上昇する。特に、ハンガリーは2017年までに1.2ポイント、ルーマニアとスロベニアはそれぞれ0.8ポイントの伸びを示す。一方、ポーランドは低下する。
今年の成長率については、キャピタル・エコノミクスが3~4%、欧州委が3%前後と予想する。コメルツ銀は世界経済の弱含みを根拠にポーランド、ハンガリー、チェコ3カ国の景気が大きく減速するとみている。