トルコ政府、観光業界を支援

トルコのダウトオール首相は22日、テロ事件や対ロシア関係の悪化で旅客減少に悩む観光業界を支援する方針を明らかにした。経常黒字の稼ぎ手である同業界の不調が経済全体に大きな影響を及ぼすためだ。助成や債務再編支援を実施する。

同計画では観光企業に総額2億5,500万リラ(8,000万ユーロ弱)を助成する。また、総額2億8,800万リラの債務の償還期限を2019年まで伸ばす。

2015年通期の観光業界売上高は前期に比べて8.3%減少。第4四半期に限ると前年同期比で14.3%落ち込んだ。このため、資金繰りに困る企業が増加し、業界の不良債権額は9億9,100万リラと過去13年で最高の水準に増えている。先月末時点で売りに出されているエーゲ海・地中海沿岸のホテルは1,300軒にも上った。

景気悪化の背景にあるのが、治安と対ロシア関係の緊迫だ。過激派勢力によるテロ事件が相次ぎ、先月にはイスタンブールでドイツからの旅行客が10人死亡。今月はアンカラで軍人を中心に28人もの犠牲が出た。

加えて、11月のトルコ軍によるロシア軍機撃墜を受けて両国関係が緊張し、ロシア人旅行客の足もぱったり止んだ。

トルコはこれまで、ドイツでもロシアでも人気旅行先の一つだった。

旅行世界最大手の独TUIは先ごろ、夏のトルコ旅行の予約が40%減ったと発表した。イタリアのMSC、コスタ、英トムソン、独アイーダなど、クルーズ大手8社はトルコへ向かうツアーのキャンセルに踏み切っている。

2015年のトルコ観光業界の経常黒字は、国全体の経常赤字の8割弱に匹敵する。同業界の不振は経常収支の悪化に直結する。(12月9日号「モスクワ国際空港の減収50億ルーブルに、航空機乗り入れ禁止で」を参照)

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