ポーランドが独自動車大手ダイムラーの高級車事業メルセデスベンツの工場誘致に乗り出している。同社が先ごろ、欧州に乗用車工場とエンジン工場を新設する計画を公表したことを受けたものだ。ジャガー・ランドローバー(JLR)の工場の誘致合戦でスロバキアに敗れた経験を生かし、準備を進めるとみられる。
メルセデスベンツのシェーファー生産部長は1日、2020年までに欧州に乗用車工場を新設する方針を明らかにしていた。年内に立地を決定する。有力候補だったロシアは経済情勢を考慮してリストから外した。また、既存工場の再編が予定されるドイツも除外する。
ポーランド経済紙『プルス・ビズネス』は、チェコに本拠を置く自動車部品の品質管理コンサルティング会社、エグザクト・システムズのオパラ販売取締役の話として、候補はポーランドとルーマニアに絞られるとの見方を報じた。理由として、◇チェコは人材が不足◇ブルガリアは投資環境が不十分◇ハンガリーはすでにメルセデス工場が操業◇セルビアは欧州連合(EU)に未加盟◇スロバキアはJLRの誘致で自動車産業の過密が一層進んだ――などを挙げている。
ポーランド投資庁(PAIiIZ)ではメルセデス工場の誘致に関連するコメントを避けている。昨年、ピエホチンスキ経済相(当時)が「まもなく巨額投資を獲得する」と発言したことでJLR誘致に失敗したためだ。匿名筋の情報では、今月末までに立地選定が完了するとも伝えられ、水面下ではすでに熱い誘致合戦が繰り広げられているとみられる。