今月5日に総選挙が行われたスロバキアで、政権与党の中道左派「スメル・社会民主主義」など4党が連立政権の樹立で合意し、フィツォ首相が続投する見通しとなった。4党を合わせた議席数は定数150議席に対して85議席となり、過半数を確保する。ただ、4党は欧州政策を巡って立場が大きく異なり、組閣に向けた調整は難航が予想される。
フィツォ首相率いるスメルとの連立に合意したのは急進右派の「国民党(SNS)」、キリスト教民主派の「橋(Most-Hid)」および「ネットワーク(Siet)」の3党。政策内容は今後詰めるとしている。
ナショナリスト政党である国民党とハンガリー少数派の「橋」が手を組むのは初めて。国民党は過去2回、連立与党として政権に参加したが、前党首の少数派攻撃などで他政党や隣国との関係悪化につながった経緯がある。ダンコ現党首が穏健路線をとったことと、「橋」のブガール党首が他党とも一致点を探る姿勢を貫いていることが、歴史的な連携の背景にある。
欧州連合(EU)は今回の組閣で一息つけそうだ。多くの政党が議会入りし、与党第1党のスメルが議席の3分の1を失った状況で、他にはEU懐疑派の「自由と連帯(SaS)」を中心とした右派連立政権の可能性しかなかったからだ。
フィツォ政権との対立点が難民政策に限られていたのに対し、SaSは他の多くの政策でもEUを批判している。2011年には連立与党であったにもかかわらず、EUのギリシャ支援、ユーロ安定化政策にも反対し、ラディチョバー政権(当時)を退陣に追い込んだ。
ただし、スメルと「ネットワーク」、「橋」が基本的にEUを支持する一方で、国民党はEU脱退を唱えており、欧州政策を中心に立場の違う4党の足並みをそろえていけるかどうか、フィツォ首相の手腕が問われそうだ。(東欧経済ニュース2016年3月9日号「スロバキア議会選、与党が過半数割れ」、2011年10月19日号「スロバキア、暫定内閣発足に向けて党派間会合」を参照)