2016/5/4

総合・マクロ

ABインベブがSABの東欧事業も売却へ、買収認可に向け是正策提示

この記事の要約

ビール世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ、本社ベルギー)は4月29日、買収で合意している英SABミラーの東欧事業を売却する方針を明らかにした。ABインベブは競争上の問題を解消して関係国・地域の監督 […]

ビール世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ、本社ベルギー)は4月29日、買収で合意している英SABミラーの東欧事業を売却する方針を明らかにした。ABインベブは競争上の問題を解消して関係国・地域の監督当局から買収の認可を得るため、SABミラーの事業売却を進めている。欧州事業に関しては、既にSABミラーが展開する3つのブランドをアサヒグループホールディングスに売却することで合意済み。欧州委員会は5月24日までに買収計画を認めるか、最長4カ月にわたる第2段階の本格調査に入るか判断する。

ABインベブは昨年11月、業界2位のSABミラーを710億ポンドで買収することで合意した。今回新たに売却の意向を表明したのはSABミラーの欧州事業のうち、チェコ、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、スロバキアの5カ国が対象。SABミラーは東欧市場で15%のシェアを持ち、デンマークのカールスバーグ、オランダのハイネケンに次いで3位につけている。売却されるブランドにはチェコの「ピルスナー・ウルケル」やハンガリーの「ドレハー」などが含まれており、売却額は46億~78億ドル程度とみられている。

ABインベブは4月下旬、アサヒとの間でSABミラーが欧州で展開する「ペローニ」(イタリア)、「グロルシュ」(オランダ)、「ミーンタイム」(英国)の売却について正式契約を締結した。新たに東欧事業の売却が成立すると、ABインベブはSABミラーが経営権を持つすべての欧州事業を手放すことになるため、市場では「欧州委が第2段階の調査に入る理由はなくなる」(ベーレンベルグ銀行のアナリスト)といった見方が出ている。

1人当たりのビール消費量が世界1位のチェコを筆頭に、中東欧諸国は伝統的にビール愛好家が多いことで知られるが、最近は人口減少や景気の低迷、健康志向の高まり、飲酒運転に対する規制強化などを背景に消費量が減少している。欧州での基盤強化を狙う大手ビール会社が買収に乗り出す可能性もあるが、投資先としての魅力が低下しているため売却交渉は難航するとの指摘もある。