オーストリア金融大手のエルステ・グループが14日発表した最新リポートによると、中東欧諸国の多くで実質賃金の上昇率が拡大している。インフレの抑制やデフレからの脱却が奏功しているケースも多い。ただ、過去数年でみると、労働生産性と賃金の上昇率は全体的につり合いがとれている。
今後は雇用が増加する一方で景気の減速が見込まれることから、賃金の伸びが生産性の拡大を上回ると予想される。これが直ちに大きな影響を及ぼすことはないが、生産性と賃金を釣り合いをとりながら増加させるためには構造改革が避けられない。
過去数年、実質賃金と労働生産性の伸び率が同じような水準で推移してきた国としては、ポーランド、チェコ、ハンガリー、ルーマニアがあげられる。ただ、チェコを除く3カ国では賃金の上昇ペースが上がり、生産性の伸びとの均衡が乱れる見通しだ。
スロバキアとスロベニアは、生産性の改善が賃金上昇率を上回っている。
一方、クロアチアは生産性よりも賃金の方が伸びが早く、中期的に競争力低下が懸念される。ただ、通貨クナ安が進んでいることから、単位労働コスト(ULC)でみると、製造業の生産性は賃金上昇を上回っている。
セルビアについては、労働生産性に関するデータが存在しないため、製造業のULC指標値を材料に検討した。ULCは2009~11年に下降を続けた後、部分的に急激な上昇を示したが、全体では11年の水準にとどまっている。年初以来、賃金が上昇しているが、他の東欧諸国に比べるとまだ安く、競争力を維持している。