制裁特需~ロシア

原油安と欧米による制裁に苦しむロシア経済だが、その陰で農業が思わぬ「特需」に湧いている。報復制裁で欧州から、そしてトルコのロシア軍機撃墜事件後には同国からも農産物の輸入が禁止され、国産食品の需要が高まっているためだ。また、農産物の輸出も増加し、国内総生産(GDP)の減少を緩和する効果を示した。

プーチン大統領は2020年までの自給自足を目標に掲げ、助成金支給や税制優遇などの支援策を実施している。その恩恵を被っているのが体制変換を乗り越えた元コルホーズを経営する投資家だ。

富豪モシュコヴィッチ氏が保有するロスアグロは昨年、約30億ルーブル(4,100万ユーロ)の助成と免税措置を受けた。純益率は33%とルクオイルの5%の6倍以上だ。株価はほぼ2倍に上昇した。

複合企業「システマ」のエフトシェンコフ会長は、対独戦時に活躍した戦車「T-34」の名を冠したトマトで再び欧州に「殴り込みをかける」計画だ。昨年12月、トルコ農産物の禁輸が発表されて間もなく、コーカサス最高峰、エラブルス山麓にあるユージヌイ農園を買収。サッカーフィールド2,300面分に相当する広さの温室でトマトを栽培し、18時間離れたモスクワに出荷する準備を整えている。

トカチェフ農業相も家族が農園経営を拡大中だ。昨年の農相就任時に20万ヘクタールだった農地は、これまでに45万6,000ヘクタールへ拡大。ロシアで十指に入る大きさとなっている。同農園の純益は2015年に66億ルーブル(8,900万ユーロ)と、13年から3倍に急増した。

昨年、ロシア農業生産は前年比で3%増加し、GDPの落ち込みを3.7%で食い止めた。穀物の豊作を背景に、農産物輸出高は武器を超える200億米ドルに達し、経済を支えている。

一方、禁輸「効果」で食品自給率が上昇し、輸入高は2013年比40%減の265億ドルまで減少した。

ロシア農産業は今後も伸びる余地が十分だ。これまで成長したのは大型経営の元コルホーズで、体制変換後に農業労働者に分け与えられた農地は発展途上だからだ。

また、推算によればロシアにはまだ農地に適した土地が4,000万ヘクタール以上ある。プーチン大統領はその一部の「開拓」を許可する意向で、農業大手は食指を動かしている。(1RUB=1.61JPY)

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