トルコとイスラエルが先月28日に関係正常化で合意して以来、両国を結ぶ天然ガスパイプラインの建設計画が再び注目を集めている。トルコでは新たなガス関連事業や建設需要が期待され関連企業の株価が上昇する一方、領海を接し民族対立を抱えるキプロスとの権益の調整などハードルもある。
トルコとイスラエル間のガスパイプライン計画は、2009~10年にかけてイスラエル沖の地中海で発見されたガス田「リヴァイアサン」と「タマル」で採掘された天然ガスをトルコの地中海沿岸の都市セイハンまで輸送することを目指すもの。セイハンでアゼルバイジャン産の天然ガスをトルコ経由で欧州まで運ぶアナトリア縦断パイプライン(TANAP)に接続する。
報道によると両ガス田の推定埋蔵量は「リヴァイアサン」が5,000億立方メートル、「タマル」が3,000億立方メートル。総距離500キロメートルに及ぶパイプラインで年間最大300億立方メートルの天然ガスを輸送する。そのうち80~100億立方メートルをトルコが輸入し残りを欧州まで運ぶ予定だ。建設費は30億ドル。一部専門家は「リヴァイアサン」についてはトルコのゾルル・エネルギーがイスラエルのエネルギー関連企業エデルテックと提携するとの見方を示している。同社の関連会社ゾルル・ドガドガスのチェレプチ社長はブルームバーグに対し、同パイプラインプロジェクトは早ければ2020年までに完了するとの見通しを明らかにした。またトルコの政府系石油会社TPAOと同パイプライン会社BOTASが同計画に参加するかどうかはまだ未定だとも述べた。
イスラエルからの天然ガスの輸入はトルコにとってガス輸入元の多角化を図る意味でも重要だ。同国はガス消費量の98%を輸入に頼っている上、輸入量は年率1.5%のペースで増加しており、2020年には520億立法メートルに達する見通しとなっている。輸入元のシェアはロシアが55%、イランが16%、アゼルバイジャンが13%とロシアへの依存度が高い。
同計画についてはパイプラインの通過料収入や、パイプラインの建設・運用に関連した事業にも期待がかかる。TANAP建設時にはパイプラインに使用する鋼管をトルコ企業が供給した。トルコ企業は資材供給以外にも天然ガスを利用した火力発電やガスの配送などの新事業にも関心を示している。