ロシアで輸入車両を再輸出する動きが活発化している。最近のルーブル安を背景に同国に工場を持つ独フォルクスワーゲン(VW)や韓国の現代自動車が輸出増に向け現地生産を増やす一方で、国内外の価格差を利用しマージンを得るため輸入車を再輸出する事業者が増えている。そのためメルセデスやレクサスといった同国で生産されていない車両の輸出が増加するという現象も発生している。
コンサルティング大手プライスウォーターハウスクーパース(PWC)は、ロシアで昨年購入された全車両の約8%超が輸出向けだったと推計している。同国の税関庁によると、今年1-5月期の自動車の輸出先はドイツ、中国及び米国の順に多かった。特にロシアと関税同盟を結ぶカザフスタンとベラルーシの国籍を持つ業者が輸出を扱うケースが目立つという。
モスクワで勤務する監査法人大手アーンスト・アンド・ヤング(EY)のトミシェフ氏はこの現象について「再輸出が増えるのはロシアと海外との間に価格差があるためだ」と述べる。ルーブル安による輸入車の販売価格上昇が抑えられたことで、同国で販売された車両が海外市場よりも割安になったのが原因だという。
ルーブルは原油価格の下落に伴い2014年に比べ半分の水準まで減価した。昨年だけでも対ドルで20%ルーブル安が進んでいる。それに伴い高級車などの輸入材価格は大きく上昇したが、景気の悪化による需要減や自動車会社に対する政府の大幅な助成措置により販売価格の上昇は抑えられてきた。最近数カ月は原油価格がやや上昇に転じたためルーブルは年初来ドルに対して14%増価したが再輸出ビジネスが減少する気配はない。
ロシアの自動車市場調査会社アウトスタットのウダーロフ氏は、「為替レートが急激に上昇し販売会社は販売量確保のため価格の抑制を余儀なくされた。そのためロシアでは他国に比べてより長期間、価格が低い水準に抑えられてきた」と述べた。