ベラルーシのソフトウェア産業が輸出を伸ばしている。ソフトウェア関連製品・サービス輸出額の近年の増加率は年平均25%に上り、昨年の輸出額は8億1,800万ドルと2012年に比べほぼ倍増した。2020年まで実質で年率20%増加するとの予測もあり、年間輸出額は同年までに20億ドルに達する見通しだ。安価で質の高い情報技術(IT)エンジニアを多く抱える同国には1,000を超えるIT企業があり、そのうち3分の2が海外からアウトソーシングサービスを受注している。
同国の情報通信技術関連市場におけるソフトウェア関連部門のシェアは2012年から15年にかけて6.8%から11.7%まで上昇した。ソフトウェア関連企業で働く技術者は約4万人。国内に研究開発拠点を置く外国企業の数はおよそ80社にも上る。
今や同国で最も勢いのある産業となったソフトウェア部門に関連した代表的なプロジェクトが、2006年に設立された国営のハイテクパーク(HTP)だ。ミンスクに設置されたHTPへの進出企業は大幅な税制優遇措置を受けることができる他、バーチャル(仮想)な工業団地であるため実際の拠点はベラルーシ国内のどこにでも置くことができる。HTPには現在159の企業が進出し、2万5,000人以上のITエンジニアを抱えている。15年だけで3,000人の雇用が生まれるなど好調だ。同地に進出する企業の内訳は国内企業が70社、外国企業が60社、残りは外国企業との合弁企業となっている。
HTPの昨年の売上高7億7,300万ドルのうち91.3%がソフトウェアとその関連サービスの輸出によるものだった。国内での売り上げは6,740万ドル。HTPで操業する企業の輸出は過去数年間2桁の伸びを示しており、2015年には11年の3倍を記録した。今年1-3月期の輸出額は前年同期比17%増の1億6,400万ドル。HTPのツェプカロ氏は、年間輸出額は10億ドルに上ると予想している。ベラルーシのIT関連サービスの全輸出額に占めるHTP進出企業の割合は85%。輸出増に大きく貢献している企業には、EPAMシステムズ、ゲーム・ストリーム、IBA IT Parkがある。全体の5分の2以上が米国と西欧向けだ。
国際アウトソーシング専門家協会(IAOP)の「2016年グローバルアウトソーシング100」にベラルーシからランキング入りした企業は、EPAMシステムズ、IBAグループ、Intetics、Intransitionの4社。それ以外にも世界的に知られた企業としてコンピューターゲーム「World of Tanks」を開発したゲーム・ストリームがある。
同国でソフトウェア産業が盛んになった背景にはいくつかの要因がある。欧州連合(EU)に隣接しているという地理的な要因や、旧ソ連時代からソフトウェア産業が盛んで全製品の約半数を生産していたという経験、ITに関連した教育機関が多く存在していることなどがある。しかしその他の大きな要因として同国のソフトウェア産業における賃金が他国と比較して安価であることが挙げられる。2015年の専門技術者の月平均賃金は約1,800ドルから1,900ドルに過ぎない。
こうしたソフトウェア産業の興隆を背景として、ベラルーシは国際電気通信連合の情報通信技術(ICT)普及度ランキングで順位を大きく上げてきた。2005年に74位に過ぎなかったが15年には36位まで上昇した。
政府はICT部門の更なる発展を目指している。先ごろ策定した中期プログラムに従い、今後10億ドルを投じて同部門の国内総生産(GDP)に占める割合を2015年の3.2%から20年に3.8%まで引き上げる方針だ。