任天堂の新ゲーム「ポケモンGO」のモスクワ版が今月にも登場する。拡張現実(AR)技術を用い、スマホでロシアの歴史的人物を集めて一緒に自分撮りができるというものだ。
モスクワ市当局によると、ソ連時代のロックスターのヴィクトル・ツォイ、人類初の宇宙飛行士ガガーリン、国民的詩人プーシキン、言わずと知れた大作曲家のチャイコフスキー、モスクワ大学を創始した博学者ミハイル・ロモノーソフ、イワン雷帝、ピョートル大帝とその父、ツァーリ・アレクセイ・ミハイロヴィチ、ロシアの冬将軍に敗れたナポレオン・ボナパルトがゆかりの場所に登場する。
ポケモンGOは先月6日の米国、豪州、ニュージーランドを皮切りに配信が始まり、またたく間に広がった。ロシアでは「サーバーの能力不足」を理由に配信が延期となったが、報道によれば100万人以上が外国経由でダウンロードして楽しんでいるようだ。
ポケモンGOは与党政治家からナショナリストにいたるまで、さまざまな批判を浴びている。ある保安政策担当議員は「我々を内から破壊する悪魔」、「西側の心理作戦で若者を操作するために使われる危険がある」、「革命につながる恐れ」と警鐘を鳴らす。
他の保安関係者は「米国が罪なき人々をモンスターで戦略的に重要な場所におびき寄せて写真を撮らせ、情報を集める手段となりかねない」と警戒する。
ある共産党議員は「ロシアをスパイするために米中央情報局(CIA)が開発した」との疑念を抱く。極右政治家も米サンフランシスコにあるポケモンGOの開発会社が「CIAのスタートアップ企業と関係がある」と主張している。
プーチン大統領を強力に支持する「IRBISコサック正教会同盟」も「人々を仮想現実から引き戻さなければならない。全て悪魔のにおいがする」と訴える。
一方で連邦通信監督庁(ロスコムナゾール)はCIAによるスパイの疑いは持たないものの、「ユーザーの個人情報を必要以上に収集する可能性がある」として慎重に対応する方針だ。
政治関係者の懸念をよそに、ポケモン人気に便乗する企業も現れた。携帯大手のビンペルコムは、「国内でアプリをダウンロードする方法(トリック)を教えます」と宣伝して客の呼び込みを図っている。最大手銀行のズベルバンクは有料アイテムを使って都市にある29支店付近にポケモンがたくさん現れるスポットを設けて集客につなげようとしている。
そして、ポケモン全145種を世界で最初に集めたのもロシア人。サンクトペテルブルグの学生、ティモフェフさん(19)がその人で、納得できる金額であればアカウントを売ることも考えているという。