汚染地域を自然保護・再可エネ地域に~ウクライナ

今月1日、チェルノブイリ原子力発電事故で立ち入り禁止となっている半径30キロメートル区域の大半を、自然保護区に指定する大統領令が発効した。風力・太陽光発電設備の建設、研究調査活動を認める法案と連動したもので、事故後30年を経過して汚染地域の位置付けを大きく見直すものだ。

福島原発でも人の住まなくなった地域で野生動物が増加している実態が報じられているが、チェルノブイリの立入禁止区域は30年という時間を経て、大自然がよみがえっている。被爆量が多いはずであるのに、シカやバイソン、イノシシ、ウマ、クマなどの大型獣のほか、オオカミ、タヌキ、アナグマ、キツネなど、数多くの種が他の地域よりも多く生活している。放射線よりも人間の害のほうが大きいということらしい。

これまでは学術調査を実施しても政府が承認しなければ結果を公表できないなど、実態調査や知識共有が難しかった。政府は今回の措置で事故30年を機に立入禁止地区のあり方を定義しなおし、研究調査プロジェクトの実施を簡易化することで学術発展に貢献したい意向だ。

同時に放射線量が大幅に減った地域を再生可能エネルギーの生産に役立てることも検討している。具体的には太陽光発電が計画されており、政府では最大で出力4ギガワットの発電パネル設置が可能とみている。送電インフラはチェルノブイリ時代のものを使う。まずは10億ユーロの投資を呼び込み、1ギガワットを整備したい考えだ。すでに欧州復興開発銀(EBRD)で投資要請活動をスタートしたほか、欧州、米国、カナダからも関心を呼んでいるという。

ウクライナは発電に必要な石炭・天然ガスの多くをロシアに頼る。エネルギー政策では依存を小さくすることを目標にしており、その観点からもチェルノブイリ地域の経済利用が理にかなうというわけだ。

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