ルーマニアにおける新車販売が拡大している。自動車関連部門の昨年の売上高は前年に比べ11%増加した。また自動車部品産業も今年さらに成長すると見られている。売上増の他、部品の輸出も増加しているため、ダチアやフォードといった国内メーカーの需要に左右されることも少なくなっている。大規模投資の時期は過ぎたものの、各メーカーは既存施設の拡張を計画している。
同国の自動車及び自動車部品産業は、仏ルノー傘下のダチアや米フォードといった完成車メーカーの他、ドイツなどの自動車部品メーカーが進出し重要な産業部門となっている。同国の自動車産業の従事者は20万人を超える。また従業員数で上位100社に入る同国の大手企業のうち、自動車関連会社は36社を占めている。ルーマニア自動車工業会(ACAROM)によれば、同部門の昨年の売上高は200億ユーロで前年から11%増加した。これは同国の国内総生産(GDP)の約12.5%に当たる。売上高のうち、完成車メーカーのダチアとフォード両社を合わせた売上額は51億ユーロで、部品メーカーは149億ユーロだった。
堅調な国内経済を背景に、自動車関連部門は最近2年間の好調を維持している。今年上半期の乗用車販売台数は前年同期から10.2%増加した。民間所得と民間消費が比較的堅調に成長していることから個人向け販売が伸びているが、法人向けの比率は依然大きく、今年上半期には全乗用車販売の79%を占めた。一方同国で生産された乗用車の90.5%が輸出向けだ。
同国の完成車メーカーの1つ、フォードは2012年以来、中南部のクラヨバで「EcoBoost」エンジンを生産してきた。17年からは2億ユーロを投じて施設を整備し、小型SUV「EcoSport」を生産する予定だ。一方、クロスオーバーモデル「B-MAX」の同国での販売は成功せず、今年は生産の縮小を余儀なくされた。
もう一つの完成車メーカー、ダチアは中南部のミオヴェニ/ピテスティ工場で生産する低価格モデルを欧州へ輸出し成功してきた。同社は競争力強化のため、工場の自動化率を現在の5%から30%に高めると共に国内での部品調達を拡大しようとしている。
人件費の点でもルーマニアは魅力的だ。法定最低賃金は月額で1,250レウ(約279ユーロ)。ACAROMによると、各種手当てを含めた1時間当たりの賃金は7.70ユーロに過ぎない。電力・ガス料金などの光熱費も比較的安価なことに加え、国や地方の投資優遇措置や欧州連合(EU)の補助金が利用できるのも利点だ。
また労働者の質も高く評価されている。ただ、ティミショアラ、アラド、オラデアといった同国西部では熟練労働者を確保するのが難しくなっており、企業の関心はセベス、デヴァ、シビウ、ピテスティ、フネドアラといった中央部やモルドバ地域に向かっている。
ダチア/ルノーとACAROMが出した同国の自動車産業に関する最新の報告書によると、中期的に投資先として期待が持てる部門には、高品質プラスチック、鍛造及び鋳造加工、アルミリサイクル、電気機器、アルミニウム製ホイールリム、ステアリングコラム、エンジン部品及びトランスミッション、溶接部品、エンジン付属品、電子安全装置、ディスク、ブレーキシステム、車載装置、エンターテイメント及びナビゲーション機器、ショックアブソーバーといった多くの部品が含まれている。
ACAROMによれば、同国には600以上の自動車部品メーカーがある。そのうち158が海外企業で、現地に子会社を設立している。また世界の上位20社のうち13の企業が同国に進出している。自動車部品部門の成長は今年も続くと見られているが、大規模投資の時期は既に過ぎており、多くの計画が事業の拡張を図るものとなっている。独ダイムラーは現地子会社のスター・トランスミッションを通して、今年4月からメルセデスの新型オートマチック車用のトランスミッションを生産し始めた。コンチネンタルは同社の5つの部門全てが同国に進出しており、7つの工場と3つの研究センターを持ち、6つの都市で1万5,000人以上を雇用している。
国際的な部品メーカーは近年同国内の進出先を多様化させている。ドイツ企業の場合はドイツ系住民が多く西欧と高速道路でアクセスし易い西部及び中部地域が多いが、コンチネンタルやワイヤーハーネス大手のドレクスルマイヤーなどの部品メーカーは、西部及び中部地域のみならず、ダチアが工場を持つミオヴェニ/ピテスティやフォードが拠点を置くクライオヴァ周辺などを含む東部、南部、南西地域にも進出している。(1RON=25.55JPY)