ポーランド、遠隔医療充実に向けた動きが加速

医療機関での待ち時間が問題となっているポーランドで遠隔医療の充実に向けた動きが加速している。同国の遠隔医療はまだ発展段階にあるものの、今後は特に医療アドバイスと予防の分野で遠隔医療がますます重要になると考える専門家が多い。いくつかの診療機関が政府や欧州連合(EU)の助成金を利用してネットワーク化を進めている他、情報通信関連企業や医薬品販売会社がインターネット医療に参入し始めている。

今年に入り同国の国民健康基金は、老人医療と心臓医学の分野で遠隔医療に関連した契約を締結してきた。またEUも補助金で遠隔医療を支援しており、同国では多くの医療機関が遠隔医療に向け動き出している。この10月には2つの医療機関が合わせて2百万ユーロに上るEUの補助金を受け、インターネット医療サービスの導入に乗り出した。

ワルシャワにある母子医療機関IMIDは2018年半ばまでに、4つの他の医療機関と共同で患者データと書類の管理システム及びオンライン医療サービスを導入する方針だ。他の医療機関との間で患者情報の参照と病理検査に関する情報を中心にやり取りするネットワークを設置し、IMIDの医療専門家が医療上の意見をネット上で交換する。また、心臓疾患研究所は来年末までに書類の回覧と患者からの連絡がオンラインで行えるようにする意向だ。同研究所は診察の予約とその管理を行うためのポータルサイトを立ち上げると共に、eラーニングやネット会議の導入も計画している。

電子医療の導入で先行しているのは、南部クラクフにある情報通信企業コマルフ(Comarch)の医療子会社が設立した病院だ。遠隔医療に特化した同院は今年、老人向け医療のパイロットプロジェクトを開始した。対象となるのは心臓疾患、呼吸器疾患及び糖尿病の患者約250人で、各自がタブレットと遠隔操作可能な医療機器の支給を受ける。支給機器には血糖値や血圧の測定器、心電計、肺活量計などが含まれる。こうした機器を用いて1万5,000件に上る遠隔診療を行い、その結果をリアルタイムに評価する予定だ。患者は直接モニタリングセンターと話すことができる他、急を要する場合には自動的に救急車を手配することが可能だ。

またクラクフには同地のAGH科学技術大学のスピンオフ企業で、遠隔医療を提供するシルバーメディア(Silvermedia)がある。健康医療分野のIT技術に特化した同社はこの7月に南西部のヤロスラフで遠隔医療プラットフォームを立ち上げた。患者はワイヤレスな測定機器を用いて自宅で各種検査を受けることができる。医師はインターネットを通してデータを受け取る一方、患者はアプリを通して医療相談や診察を受ける。また患者は自身の医療履歴にアクセスできる上、健康に関する助言や薬の摂取の確認を受けることも可能だ。同プラットフォームが現在対象としているのは心臓疾患、糖尿病、精神疾患だが、来年にはアレルギー疾患、肺疾患及び一次医療分野まで拡大することを計画している。

医薬品卸で同国最大のネウツァ(Neuca)は、数十万ユーロを投じてデジタル化のノウハウを持つスタートアップ企業を買収し、インターネット医療に参入する。買収したのは、糖尿病患者のモニタリングを行う装置やソフトウエアを開発するダイブディス(Daibdis)、救急車向けクラウド技術を提供するメディポルタ(Mediporta)、オンラインでリハビリ製品を販売するオルトペディア(ortopedia.pl)。同社副社長のジョツェファツキ氏は現地紙に対し、企業間のシナジー効果を期待しており、今後さらに買収を進めるため数百万ユーロを用意していると話した。

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