英ジャガー・ランドローバー(JLR)の進出を前に、スロバキア自動車業界で賃金上昇が加速している。人手不足が深刻化するとの見通しから、各社が従業員確保に動いているからだ。業界団体は今後1万4,000人が不足すると警告している。
起亜自動車はこのほど、東部ジリナ工場の従業員に、最大で月117ユーロの賃上げを認めた。PSAプジョー・シトロエンも今月初め、西部のトルナバ工場で6.3%の賃上げと勤続10年超の従業員へのボーナス支給を決めている。フォルクスワーゲン(VW)のブラチスラバ工場では労組が16%のベアを要求している。
現在でも自動車業界の賃金水準は他業界に比べて高い。管理職を除いた2016年の全国平均賃金は約900ユーロだが、起亜自では1,350ユーロ、PSAでは1,331ユーロ(2015年)、VWのブラチスラバ工場は1,7950ユーロ(諸手当を含む)。VWでは先月、2016年の好業績を受けて1人あたり1,560ユーロの特別手当の支給が合意されている。
専門家らは賃金上昇の背景に人手不足があると指摘する。既進出の3メーカーの求人数は現在、1,800人にも上る。これに加え、西部トルナバで工場を来年開所するJLRは2,600人以上の雇用を予定し、求人に当たって初任給1,200ユーロ超を約束している。JLRと取引のある部品メーカーも進出するのは必至で、スロバキア自動車工業会では2020年までに1万4,000人の人手が不足すると警鐘を鳴らしている。