セルビアで2日に実施された大統領選挙で、中道右派の与党・進歩党(SNS)のアレクサンダル・ブチッチ首相(47)が当選した。欧州連合(EU)各国は、同首相の大統領選出が親欧路線継続を意味し、同時に西バルカン地域の不安定化を阻む力になるとして歓迎している。
中央選管の3日10時発表によると、ブチッチ首相は55.1%を得票し、決選投票を待つことなく当選を決めた。2位はサシャ・ヤンコヴィッチ前国政監察官(46)で16.3%。3位は風刺コメディアンのルカ・マクシモヴィッチ氏(25)で、既存の政治勢力に失望した都市の若年層を中心に9.4%を集めた。投票率は54.1%と、2012年の前回選挙(58%)、16年の議会選挙(56%)をいずれも下回った。
ブチッチ首相は14年の就任以降、信頼の置けるパートナーとしてEU加盟国の支持を受ける一方で、国内では裁判所やメディアへの影響力を拡大。政治の「強権化」への懸念が強まっている。今回の選挙戦でもメディア報道はブチッチ支持が圧倒的で、公務員には「正しく投票」するよう圧力がかけられたという。結果的に第一回投票でブチッチ首相が過半数を集められた背景には、統一候補を立てられない野党の弱さがある。
セルビア大統領は儀礼的な存在で、政治的な実権は弱い。ブチッチ氏は大統領就任に伴い、自らに忠実な者を首相に据え、実質的な権力を握り続けるとみられている。