ロシアの化学塗料の生産が急増している。2016年はルーブル安などで輸入品に対する国内製品の競争力が強まったことなどを背景に、塗料やラッカーなどの生産量が大きく増加した。業界関係者によれば政府の輸出促進措置により今年は自動車、航空宇宙、鉄道車両及び農業技術分野での売上増が期待されるほか、政府の国産品優遇策により外国の化学品メーカーのロシア国内への工場設置も進むとみられている。
同国のメドベージェフ首相がこのほど発表した2016年の塗料及びラッカーの生産量は前年比8.8%増の129万6,700トン。染料及び顔料の生産量は3万40トンで前年から18.5%の大幅増となった。化学産業全体の伸び率4.3%をそれぞれ大きく上回っている。
同国の塗料関連企業が参加する業界団体ツェントルラクによると、ロシアの塗料・コーティング剤の昨年の市場規模は30億ドル。昨年はコーティング剤及び産業用塗料・ラッカーの売上が2015年に比べ8%増と大きく増加した。特に伸び率が高かったのは木材及びその加工材向けの製品だった。コーティング剤、産業用塗料・ラッカーの国内での売上数量は計35万トンで、うち半分を輸入品が占めている。
最も需要が大きいのは化学産業向けでここ数年来成長が続いている。生産能力の増強が続いているため化学品の生産設備に向けたコーティング剤、塗料及びラッカーの需要が特に伸びている。
建設向け需要については、今年は公共投資が50%削減される見通しであるものの、通行料収入を使った新しい自動車道の整備が予定されており伸びが期待できる。自動車道及び橋梁の建設には最大10億ルーブル(約1,600万ユーロ)が支出される見通しだ。
しかし外国メーカーは化学品の現地調達要求を強めている政府の圧力に直面している。最大の顧客は国営ロシア鉄道だが、地方自治体が塗料やラッカーを国内企業から優先的に調達しているほか、行政機関は法令により内装材と家具をロシア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス及びアルメニアが加盟するユーラシア経済連合(EEU)諸国から調達することを義務付けられている。また国内の家具製造業者は、政府へ納入する物品にはEEU諸国で作られた塗料とラッカーのみを使用する必要があるなど企業の負担は大きい。行政機関の調達額は全体の8%から10%に上る。
こうした政府の支援策を背景にロシアの塗料メーカーは家具メーカー向けの製品を拡大する一方、海外メーカーはロシア国内に工場を設置することで国内メーカーに対抗しようとしている。
国内での生産を拡大してきた海外メーカーには、デンマークのヘンペル、テクノス、オランダのアクゾノーベル、ノルウェーのジョータンがある。また、米PPGコーディングス、独スティールペイント、フィンランドのノルマーリ、英インターナショナルペイントも現地工場の建設に乗り出した。
ロシアでの生産にあたっての課題は前駆体や出発物質など原料となる付加価値の高い化学品の調達だ。国内で海外と同様の品質の製品を生産するにはこうした原料を海外から輸入する必要があるが、業界関係者によるとこうした状況は当面変わらないとの見通しだ。(1RUB=2.00JPY)