サンクトペテルブルクが経済好調、投資も進む

ロシアのサンクトペテルブルクとその周辺のレニングラード州の経済が好調だ。2016年の同市および同州の工業生産高の伸び率はそれぞれ同国平均を上回る3.9%と3.7%だった。同市の来年の経済成長率も3%に達する見通しだ。外国企業の進出が盛んな自動車が成長をけん引するほか、造船や機械産業も好調さを示している。同市周辺ではさらなる外国企業の誘致や港湾インフラの整備、スマートシティの建設が計画されるなど将来に向けた取り組みも始まっている。

サンクトペテルブルクの経済の好調さを支えているのは自動車産業だ。同市にはトヨタと日産を始め、韓国の現代自動車、ドイツのトラック大手MAN、スウェーデンの商用車大手スカニア、カナダの自動車部品大手マグナが進出しており、合わせて8,000人以上を雇用している。今年の1-3月期のトヨタ、日産及び現代自を合わせた生産台数は前年比47%増の計8万2,100台に達した。それに伴いロシア全体での生産台数に占める同市のシェアは23%から27%に上昇した。

ロシア産業貿易省によると、同国の今年の自動車生産高は7.4%増加し、生産台数は140万台となる見通しだ。同国に進出する企業が加盟する欧州ビジネス協議会(AEB)は、今年の小型乗用車と商用車を合わせた販売台数は148万台に達すると予想する。サンクトペテルブルク市は小型車と中型車の販売台数は7%増加するとしている。

同市には現在利用されていない米ゼネラルモーターズ(GM)の工場があり、進出企業を探しているところだ。市当局は進出を検討する自動車メーカー2社と現在交渉を行っている。関心を示している企業の1つは電気自動車(EV)の生産を検討しているという。同市には2015年以来、現地のエネルギー企業レンエネルゴとサンクトペテルブルク電力網の給電施設が稼働しているほか、今後もさらに増やす計画がある。

連邦政府は2020年までにEVの登録数は20万台まで増加するとの見通しを示しており、国内メーカーもEV生産に乗り出そうとしている。トラック大手カマズ(kamaz)がレニングラード州で新しい電動バスのテストを行っている。さらにサンクトペテルブルク市では23年までに2,500台の天然ガス(CNG)バスが走る予定で、10億ルーブル(約1,600万ユーロ)を投じて市内にガス供給施設のネットワークを拡大する計画もある。

サンクトペテルブルク市の経済の20%を占める造船業でも投資が進む。最大手のセーベルナヤ(Sewernaja)造船は設備近代化に310億ルーブル(4億8,000万ユーロ)を投資する。それにより将来的に全長350メートルの船舶の生産が可能になる。計画には乾ドックや建造施設の建設、輸送インフラの再整備のほか、最新設備の導入などが含まれる。

レニングラード州のドロズデンコ知事は、10月までに同地域の造船及びその修繕事業者を1つのクラスターにまとめていく予定だ。企業の近代化を図ると共に技能労働者の教育を助成することを計画している。産業貿易省も国内の造船所の近代化に150億ルーブル(2億3,300万ユーロ)を投じ、そうした動きを後押ししている。

同国の主力産業である石油・ガス関連では、ガスプロムがサンクトペテルブルク沿岸の大陸棚において埋蔵ガスの開発のためのクラスターを設定することを目論んでいる。同社はモスクワにある管理部門を同地に移すほか、バルト海沿いのウスチ・ルーガ港では英蘭系ロイヤルダッチシェルと組んで5,760億ルーブル(89憶3,200万ユーロ)を投じ1,000万トンの生産能力を持つ液化天然ガス(LNG)の生産施設を設置することを計画しており、2022年の完成が予定されている。さらに同地域ではロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン、ノルド・ストリーム2の敷設に182億ルーブル(2億8,200万ユーロ)が投じられる。又デジタル化も進めるガスプロムは、持株会社のガスプロムネフチの下、ITテクノパークを開設している。石油・ガスに関連したIT技術の開発企業の集積を進めていく考えだ。

サンクトペテルブルク北方のフィンランド国境に近いヴィソツク港では、同国ガス大手のノバテクが買収を進めているクリオガス社が630億ルーブル(9億7,700万ユーロ)をかけて年間60万トンのLNG生産能力を持つ工場を建設中だ。同じく同市北方に位置するプリモールスク港では、国営石油パイプライン会社トランスネフチが石油貯蔵施設、埠頭施設及びパイプラインの更新を計画している。それにより石油の処理量は年間2,500万トンにまで増える見通しだ。さらに同港には1億ドルをかけて石炭の積み替えターミナルも建設される予定だ。

同市では新エネルギーの利用に向けた計画も進む。郊外のプーシキン、ガチナ及びパヴロフスク近郊に「ユシュニ(Juschni)」と名付けられたスマートシティを建設するというもので、2027年までに太陽光設備を備えた住居、研究学園都市及びテクノパークを設置する。2,190億ルーブル(33億9,600万ユーロ)をかけた同プロジェクトが完了した暁には医療分野の研究に関連した6万人の雇用が生まれる見通しだ。(1RUB=1.92JPY)

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