ポーランド、充電インフラ整備が加速

ポーランド政府は今年3月、2025年までに電気自動車(EV)100万台を普及させる野心的な行動計画を閣議決定した。現状では普及の前提となる給電施設をはじめとするインフラが整備されていないため、政府は同施設の数を2020年までの3年間で20倍以上に増やすことを計画中だ。そうした動きを受け、民間事業者のほか、国営石油会社も自動車道の給電施設の設置に乗り出す構えを見せている。

2016年時点でポーランド国内を走るEVの数は約800台、プラグインハイブリッド車(PHV)は2万台に過ぎない。給電施設の数はワルシャワ周辺のショッピングセンターを中心に約300カ所にとどまっている。しかし政府はEVの目標普及台数の達成に向け、標準的な給電施設を20年までに少なくとも6,400カ所、急速充電施設を400カ所まで増設する目標を掲げている。政府は早ければこの秋にもeモビリティ法を成立させ、設置を加速させる方針だ。給電施設事業を展開するグリーンウェー・インフラストラクチャー・ポーランド社によると、政府は給電施設の設置や送電網の近代化にかかる費用を含め最大5億ユーロを用意しているという。

こうした政府の方針を受け、電力会社をはじめとするエネルギー企業や給電設備メーカーの取り組みが活発化している。

ドイツのエネルギー大手RWEは過去10年間ポーランド各地に給電施設を開設してきた。これまでにワルシャワに10カ所、ポーランド全体で70カ所設置している。そのうち12カ所は公共スペースにあるため、誰でも利用することが可能だ。

スイスの重電大手ABBはポーランド国営電力エネルガ(Energa)や仏小売大手オーシャン、独小売大手リドルと共同で給電施設の整備に取り組んでいる。仏給電設備メーカーDBTもエネルガと協力して、国内で最も売れているEV「リーフ」を擁する日産自動車の販売網への設置を進めている。ガラクティコpl(Galactico.pl)は同国の設備メーカー、エコエネルゲチカ・ポルスカ(Ekoenergetyka Polska)と共同で給電設備の運営を行っている。

企業の多くが人口密集地域での事業に集中する一方で、グリーンウェイ・インフラストラクチャー・ポーランド社は郊外での輸送車両に焦点を当てている。同社は今年末までに南部のクラクフから北部のグダニスクをまでをカバーする給電インフラを整備する計画で、2018年末までに75カ所、2年後には200カ所以上を設置する予定だ。

幹線道路で給電インフラを整備する際に障害となるのは、各サービスステーションが借地契約となっている点だ。グリーンウェイによると同社は給電中に時間をつぶすことができるようなファーストフード店などがあるサービスエリアに重点を置いているが、サービスエリア全体が借地となっているため既に進出している石油会社と合意する必要があるという。

一方、石油会社自身も給電施設の拡大に向け動き出している。ポーランドの国営石油大手ロトス(Lotos)はまずは自前でのインフラ整備を目指していく方針で、既に給電施設の設置場所として50カ所を選定済みだ。同国の大手石油会社は国営企業であることから今後どのように競争環境を整えていくのかが課題として残されている。

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