トルコのエルドアン大統領は12日、ロシアの地対空ミサイル「S-400」を導入する契約を締結したことを明らかにした。北大西洋条約機構(NATO)に加盟するトルコのロシア製兵器の購入をめぐっては、西側関係者からはトルコが西側諸国と距離を置く姿勢を一層強め、NATO加盟国の間に亀裂を生むものとして懸念する声が出ている。
今回の武器取引は、クリミア併合やシリア紛争における対立で米欧との関係が冷え込むロシアと、武器の購入や人権問題に対する批判などをめぐり米欧との関係が悪化しているトルコとの利害が一致した格好だ。一部報道によるとS-400の購入額は25億ドルで、すでに代金の支払いは完了した模様。ロシア側によれば同ミサイルの射程は400キロメートル、最大80の標的を同時に撃ち落とすことができる。ロシアからのミサイルシステムの導入についてNATO関係者は、NATOにとり重要なのは加盟国の持つ機器の相互運用性だと述べ、トルコの決定に疑問を呈した。
トルコがロシアからの武器の導入に踏み切った背景には、米国が同国への軍用無人機(ドローン)の売却を拒否し自国開発に入らざるを得なかったことや、ドイツ国籍を持つジャーナリストの拘束など同大統領の強権的な姿勢に対し人権上の懸念を示すドイツが、同国への武器輸出を全面的に中断していることなどがある。
2015年にトルコ軍がロシア軍機をシリアとの国境沿いで撃墜して以降、エルドアン大統領はロシアを訪問するなど関係改善に努めてきた。両国は昨年、頓挫していた天然ガスパイプライン建設プロジェクト「トルコ・ストリーム」を再始動することでも合意している。